みなさん,こんにちは。「知的生活ネットワーク」のLyustyleです。
近年夏休みが短縮される自治体が増え,9月1日からではなく今週から2学期という学校も多いのではないでしょうか。おうちの方は大助かり。子どもたちはげんなり・・・という様子かもしれませんね。
夏休みモードをいかに元に戻していくかということで,学期始めは「黄金の三日間」という言葉が教師の中では昔から言われてきました。生活習慣を学校モードに戻し,今学期の見通しを持たせ,そしてワクワクした気持ちでスタートを切らせるには,最初の三日が肝心というわけです。本校でも,始業式からのスタートに向け,私たち教師はみんな張り切って準備をしていました。
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さて,ゲームとのつき合わせ方についての連載,いよいよ最終回となります。
メインの部分は前回までであらかた終了しています。今回は補足という性格の記事になりますのでご了承ください。
前回,ふたつの事例をあげました。
目からウロコの子育てレシピ9 ゲームとの付き合わせ方2 ゲームを買う前にはなしあっておくこと
目からウロコのルールふたつ …
目からウロコのルールふたつ
これはどちらもゲームの時間については考慮されていません。果たしてそれでいいのか,はたまたやはり時間ということを考えないといけないのか述べてみたいと思います。
結論を先に言うと,時間は決めておくべきです。
ゲームの時間は決めておく
「週末の朝,朝ごはんまでは何時間でもしてよい」というルールをつくっていた私が言うのもなんですが,やはり子どもの年齢や発達段階に応じて時間は決めておいたほうがいいと思います。
こちらでは,幼少期,低学年,高学年に分けて述べてあります。
子供のゲームはいつから?決めるべきルールと時間の制限 – マーミー
幼少期は,15~30分くらい,低学年は30分程度,高学年は1時間以内と,それぞれ根拠をもって述べてあります。
小学校低学年では,友達との関係を作ったり,勉強の仕方の基礎を作ったりする学校生活入門期であることを考えると,30分程度が望ましいと考えます。子どもたちを見ていると,家でゲームをするよりも友達と遊ぶことのほうに興味がある子どものほうが多いという感触があります。ゲームの話題もあまりしないようです。
高学年になると,宿題の量が増えたり,スポーツなどの活動をするようになったります。ゲームなどやっていられる時間はないという子どもがたくさんでてきます。しかし反面,どちらにも集中できず,時間がありさえすればゲームで時間をつぶすという子どもも出てき始めます。後者の子どもの場合,時間を切ってあげないと,この時期必要な発達上の課題をクリアできないまま成長していくことになります。そういう意味でも1時間程度に時間を切るということは大切です。
なぜ,1時間なのか
1時間というのには根拠があります。
ベストセラーになった「学力の経済学」では、1時間までならゲームもテレビも影響はないそうです。
「それでは,どれくらいのテレビ視聴やゲーム使用だったら無害なのでしょうか。私たちの推計によると,1日に1時間程度のテレビ視聴やゲーム使用が子どもの発達に与える影響は,まったくテレビを観ない・ゲームをしないのと変わらないことが示されています。一方,1日2時間を超えると,子どもの発達や学習時間への負の影響が飛躍的に大きくなることも明らかになっています。」
1時間までならいいが,2時間を超えると発達や学習時間への負の影響が飛躍的に増える。著者の中室牧子准教授は,教育経済学の手法を用いて,また,長年にわたるアメリカでの同様な手法による研究の結果を踏まえて,教育や子育てに関するさまざまな「定説」に科学的根拠を持たせようとなさっています。この推計も,そのようなデータを分析し,「ゲームをしすぎる子どもは発達や学習時間に影響が出る」という説を,単に相関関係なのか,それとも因果関係なのかを調べます。
相関関係ならば,発達に課題があったり学習時間が少ない子どもにはたまたまゲームをしすぎる子どもがいた,ということもなりたちます。そうではなくて,「ゲームをしすぎること」が原因で「発達や学習時間に影響がある」という因果関係を明らかにしないと科学的根拠とはなりえません。
膨大なデータの分析により,これは「因果関係である」ことが示されました。
「ゲームは1時間までならいいが,2時間を超えると発達や学習時間に悪影響がでる」
これは科学的根拠を持ったものとして受け入れていいと思います。
余談ですが,ゲームの時間を1時間に切ったら学習時間は増えるのかというと,これはまた別です。子どもは別のことをして時間をつぶし始めます。学習が好き,学習に取り組む姿勢が変わらなければ,学習時間も増えない。これも中室准教授たちの分析であきらかになっています。だから,勉強時間を増やすためにゲーム時間を減らすのは効果がありません。しかし,前提ではあると思います。
1時間に区切りさえすればいいのだろうか
それでは,ゲームの時間を1時間と区切るなら,それは1日のうちのいつであってもいいのかというと当然ながらそういうわけではありません。
子どもの発達には生活のリズムが必要です。睡眠のところでも書きましたが,寝ている間に成長ホルモンが分泌され,その時間は決まっているのです。ですから,朝は決まった時間に置き,夜は決まった時間に寝るということは最低限必要です。
ですから,1日何分ではなくて,「朝,何時まで」とか「夕食から何時までの間」など具体的な範囲を決めるほうが子どもの生活リズムにとってよいはずです。
「宿題をすませてから30分」などもいいでしょう。
まとめ
- 低学年では,1日30分程度
- 高学年では,1日1時間程度
- 「1時間程度のゲームでは,まったくゲームをしない子どもに比べて子どもの発達への影響は変わらない。しかし2時間を超えると,子どもの発達や学習時間への負の影響が飛躍的に大きくなる」これは,中室准教授たちの教育経済学の手法による分析により科学的根拠が示されている。
- 生活のリズムをつくることが前提である。
以上です。
ゲームは楽しいものです。大人も子どもも一緒になって楽しめるものです。近頃は,親がバリバリのファミコン世代にあたるので,親子2代にわたっての楽しみになるでしょう。うまくゲームと向き合わせてほしいなと思います。
それでは,また2週間後にお会いしましょう。
小学校の教師を33年間勤めています。
渡部昇一氏の「知的生活の方法」を読んで以来,忙しい中にも知的生活を求め続ける人生を送りたいと思ってこれまでやってきました。
2008年よりブログ「知的生活ネットワーク」をやっています。
BLOG:知的生活ネットワーク
Twitter:@Lyustyle