こんにちは。「単純作業に心を込めて」の彩郎です。
この連載のテーマは、「普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける、ということ」です。
前回から、普通の個人がブログのある毎日を送り続けることの、わかりやすくて効果的な応用として、「ブログで読書は進化する」ということを考えています。
- [私の仕事道具と仕事術]KindleとWorkFlowyによる、価値をつくるための読書術
- ブログで読書は進化する(普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける、ということ)
- ブログで読書を進化させる基本にして奥義=本を読み終わった後で、ブログに書く
前回は、
- 本を読み終えた後、その本の中に何かしら自分にとって大切なものが含まれていると感じられたなら、
- その本についてのまとまった文章を自分のブログに公開することを目標に、文章を書き始めてみる。
- 文章を書き上げることができたら、自分のブログにその文章を公開してみる。
というレシピをご提案しました。ブログで読書を進化させることの、基本にして奥義ともいうべきレシピです。
でも、ひとつの文章を書き上げて公開するのは、それほど簡単なことではありません。一般に、アウトプットはインプットよりも多くの資源を必要としますので、本を読んだあとでいざ文章を書き始めても、なかなか書き上げるところまでたどり着かないかもしれません。書き始めることに意義があるとはいえ、ひとつも書き上げることができなければ、書き始めることを続けることも困難です。
そこで、本を読んだあとの文章を書き上げるために役立つコツが大切になります。
ポイントは、自分のブログの自由さを活用することです。本に関連する文章を書く過程で、どれだけのびのびと遊べるかが勝負を分けます。
[なぜ、書き上げるのに苦労するのか?]
まず、問題の原因を考えてみます。なぜ、本を読んだあとで、ブログに文章を書くことに苦労するのでしょうか。自分自身の経験をふり返ると、いくつかの原因があるような気がします。
〈苦労する原因1〉本の内容を要約するのが大変
ある本に関連する文章を公開するなら、その本の要約を載せるのが親切です。対象となる本を読んだことがある人ばかりではないでしょうから。
しかし、本の内容を要約するのは、大変です。その本の内容のうち、客観的に重要なところを理解しなければいけません。重要なところすべてを盛り込んでいては膨大な量になってしまいますので、頭を使って取捨選択しなければいけません。おまけに、1冊の本に記載された客観的に重要な点については、おおよその正解・不正解がありますので、全然ピント外れの要約をしてしまっては、自分の読解力を疑われてしまいます。
〈苦労する原因2〉自分なりの意見を形にするのが難しい
ある本に関連する文章を公開するなら、その本についての自分なりの意見を盛り込むのが望ましいです。本に書かれた内容しか書かれていない文章なら、本そのものの劣化コピーに過ぎません。自分の時間を使ってわざわざひとつの文章を書き上げるなら、自分なりの意見を盛り込まなければ、意味がありません。
しかし、自分なりの意見を形にするのは、難しいことです。(よい)本を読めば、自然といろいろな考えが頭のなかに浮かんでくるものの、そのことと、その浮かんできた断片をひとつの意見へとまとめることとの間には、なかなか超えられない壁があります。意味の通じる文章へと整えるためには時間とエネルギーが必要です。また、自分の意見を形にするということは、それに対する批判や反論を受ける可能性を開くことでもあるため、この点でも躊躇してしまいます。
〈苦労する原因3〉Amazonへのリンクや書影画像を整えるのが面倒
多くのブログ記事の通例によれば、ある本に関連する文章をブログに公開するなら、その中に、Amazonへのリンクや書影画像を盛り込むもののようです。ヨメレバのように、Amazon以外のサイトへのリンクもカバーするツールを使えば、なおよし、です。
しかし、これらは純然たる事務作業ですので、面倒なことでもあります。本を読んだり、本のことを考えたり、その考えたことを文章にしたりするのは好きでも、リンクや画像を整えるのが面倒で仕方ない、という人もいます。私はわりとそうです。
〈苦労する原因4〉引用のルールをちゃんとした形で守るのに気を遣う
ある本に関連する文章を公開するなら、その本の中に書かれていた一節を引用できるとよいです。重要なところ、気の利いた言い回し、はっとするセリフなど、その本そのものに存在する表現には、力があります。
しかし、その本の中の一節は、その本の著者の著作物ですから、自分が自由にできるわけではありません。引用するからには、引用のルールを然るべき形で守る必要があります。
ところが、このルールをきちんと守るのは、少し面倒です。また、出典元をきちんと特定するには正確な書名やページ数などの情報が必要になりますが、きちんと管理していないと、引用のたびに本をひっくり返して引用箇所を探さなければいけません。
[課題解消の方針]
これらが原因だとすると、課題を解消する方針は、大きく分けて、3つあるように思います。
〈課題解消の方針1〉ひとつの記事にすべての要素を盛り込もうとしない
本の内容を要約するのが大変なのであれば、本の内容の要約を抜きにしてしまえば問題は解消されます。自分なりの意見を形にするのが難しいなら、自分なりの意見は抜きにして記事を一本書いてしまえば、問題は消え去ります。Amazonのリンクや書影画像が面倒なら、Amazonのリンクも書影画像も省いてしまっても問題ありません。引用のルールを守るのに気を遣うなら、そもそも引用しなければよいだけです。
一般に、本に関するブログ記事は、いくつかの要素から構成されています。
- 本の内容の要約
- 自分なりの意見
- Amazonへのリンクや書影画像
- 本からの引用
王道のいわゆる書評ブログ記事は、これらすべての要素を兼ね備えているものかもしれません。でも、自分のブログに書くすべての記事で、これらの要素すべてを揃える必要はありません。
〈課題解消の方針2〉1冊の本をひとつの記事だけでカバーしきろうとしない
本の内容を要約するのが大変になる理由のひとつは、たくさんの情報量を持つ本の全体を要約しようとするからです。自分なりの意見を形にするのが難しいのは、その本を読みながら頭に浮かんできた膨大なアイデアの断片をひとつの形にするのが難しいからです。
1冊の本の全体を要約するのが難しくても、1冊の本のうちのひとつの章だけを要約するなら、ぐっと簡単かもしれません。1冊の本を読んで考えたこと諸々の集大成となる意見をまとめるのは難しくても、1冊の本を読んで考えたたくさんのことのうちの一部分をまとまった意見の形にするのは、それほど難しくないかもしれません。
このために大切なのは、1冊の本をひとつの記事だけでカバーしきろうとしないことです。
1冊の本を読んで、その本のことをブログに書きたいと思ったなら、ひとつの記事だけではなく、たくさんの記事たちを書き続ければよいのです。自分のブログなら、数に制限はありません。
〈課題解消の方針3〉ちゃんとすべきことをちゃんとするのを助けてくれる環境を整える
Amazonへのリンクや引用をちゃんと整えるのは、少々面倒です。
でも、世の中には便利なツールがいろいろとあります。工夫をすれば、楽にちゃんとできる環境を整えることができます。
とりわけ引用については、やるからにはちゃんとやる必要がありますので、環境を整えることはとても大切です。
[自由な遊び方いろいろ]
課題解消の方針の1と2は、要するに、自分のブログの自由さを活用する、ということです。
たとえば、こんな遊び方はいかがでしょうか。
〈フォーマットを借りる〉
多くの本は、フォーマットを持っています。物語、書簡、問題集、評論、詩、対談などなど。
ある本に関するブログ記事を書くときに、その本のフォーマットを借りるのは、楽しい遊び方のひとつです。
たとえば、この『これから本を書く人への手紙』は、手紙というフォーマットを持つ本です。
そこで、この本の紹介を、手紙というフォーマットで書いてみました。
〈パロディ〉
フォーマットを借りることと共通しますが、もっと強く依拠して書くこともできます。パロディといってもよいかもしれません。
たとえば、『書くためのパソコン』には、榊田耕作さんという架空の人物がオブジェクト型ワード・プロセッサというツールと出会う物語が出てきます。
私は、この物語に共感し、自分とWorkFlowyとの出会いに置き換えて、次の記事を書きました。
ベースは、ほとんど榊田耕作さんの物語です。
WorkFlowyで、骨格のある物語を書いたお話(榊田耕作さんから想田彩郎さんへ)
〈じぶん企画〉
本に関するブログ記事を書くことを、自分なりの企画にすることもできます。
たとえば、『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』という本を読んだとき、私は、「この本の書評は、はてなブックマーク受けがよさそうだ。本ブログのはてブ数記録更新を狙えるかもしれない。」と感じました。
しかし、ひとつの記事を単発で投稿するだけでは、あまり伸びない気もします。そこで、3つの記事を用意して、三段ロケットのように、はてブ数記録更新を狙うことにしました。
第2段:Evernote×読書「Evernoteにクラウド読書ノートを作る」(『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』Chapter-4のご紹介)
第3段:『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』を手引書に、ウェブを活かした個人レベルの総合的読書システムを組み立てる
当初の狙いは、第3段ではてブ数100を突破しようと思っていたのですが、実際は、第2段がいちばん伸びました。
はてブ数を狙うことの是非はともかくとして、ゲームのようなじぶん企画とすることも、自分のブログを活かす遊び方のひとつです。
〈他の方々に参加していただく〉
企画は、自分ひとりだけで閉じておく必要はありません。
たとえば、私は、結城浩先生の『数学文章作法 基礎編』を読んだあと、同じく結城浩先生の『文章教室』というウェブコンテンツを知り、これを『数学文章作法 練習問題編』として使うことにしました。これもひとつの企画です。
すると、多くの方が参加してくださいました。
結城浩先生の『数学文章作法 基礎編』を読んでから、『文章教室』2014期生のクラスメイトができるまで(あるいは、『文章教室』2014期生へのお誘い)
〈連載〉
圧倒されるほどの情報量を持つ本を読んで打ちのめされたなら、いくつものブログ記事を使って、少しずつ消化していくことができます。連載です。私はこの方法を好みます。
最近では、『サピエンス全史』について、これを試みています。
メインの連載が[『サピエンス全史』を読む]で、そこから派生したことをメモする連載が[『サピエンス全史』を起点に考える]です。
[『サピエンス全史』を読む]サピエンスの強みはどこにあるのか?(第1部 認知革命)
[『サピエンス全史』を起点に考える]サピエンス全体に存在する協力の量と質は、どのように増えていくのか?
〈三題噺〉
1冊の本は、1冊の本だけで閉じているわけではありません。本を読んだり、本について書いたりするときも、1冊の本だけに閉じる必要はありません。
このためにブログを活かすなら、つながりのありそうな本を数冊並べて、そこに自分なりの線を描いてみる、という作業をするのがよいです。落語でいう三題噺のような感覚です。
たとえば、『〈インターネット〉の次に来るもの』を読んだあと、ベーシックインカムやブロックチェーンとのつながりを感じて、線を描いてみたのが、次の記事です。
たとえば、『サピエンス全史』と『ブロックチェーン・レボリューション』との間をつなぐものを探したくて書いたのが、次の記事です。
[おわりに]
本を読み終えたあとでブログに文章を書く、というと、なんとなくの型が思い浮かびます。1冊につきひとつの文章で、それぞれの文章の中には、内容の要約・自分なりの意見・リンク・引用といった定型的な要素が盛り込まれている、というものです。
でも、自分のブログは、自由です。1冊につきひとつの文章という縛りもありませんし、すべての記事にすべての要素を揃える必要もありません。
もちろん、引用するならルールを守る必要がありますし、読者の便利を考えるならリンクや書影も大切です。ルールを守ることは大前提ですが、自由さという自分のブログの強みを活かせば、本を読んだあとで文章を書くことは、本を読むことにも負けないほど楽しい遊びになります。
自分なりに、自由にのびのびと遊んでみてください。
共働き家庭のワーキングパパ。子育てと読書とブログに没頭しつつ、持続可能な毎日を送り続けることを大切にしています。
2012年3月、ブログ「単純作業に心を込めて」を始めました。WorkFlowyを中心に、毎日に彩りを加える方法を試行錯誤してる経過を報告しています。
2016年1月、『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』という本を書きました。WorkFlowyと個人の知的生産がテーマです。
BLOG:単純作業に心を込めて
Twitter:@irodraw