私には今、やりたいことがたくさんあります。
そのどれもが自分にとって「第二領域」に属するものであり、優劣つけがたい優先度の高さを持っています。
こうなると、どうしてもやりたくなるのが「マルチタスク」です。
マルチタスクとは?
マルチタスクとはもともと、パソコンで同時に複数のプログラムを立ち上げて切り替えながら実行することができるシステムのことを言います。
しかしこれを人に当てはめて同時に2つ以上の作業を行おうとすること-つまり「マルチタスクで仕事すること」は、あまり良くないとされています。
たとえばこんな経験、みなさんにはありませんか?
テレビを観ながら勉強していたら全く頭に入らなかった、作業中にかかってきた電話の応対をしていたら何の作業をしていたか忘れてしまった、というようなことです。
これは人が作業を切り替える際に発生する、時間と脳の「コスト」が原因です。
スパッと頭を切り替えることができずに無駄に時間をロスしたりストレスを感じたりするわけです。
エラーも発生しやすく、仕事の質を下げる結果にもなりかねません。
つまり、かえって効率が悪いと考えられているんですね。
だから私は「こっちのプロジェクトが終わってからあっちのプロジェクトに手をかけよう」というように極力「シングルタスク」を心がけていました。
しかしどのプロジェクトも、短期で完結するものではありません。
後回しにされたプロジェクトはなかなか着手されないままになります。
個人的なプロジェクトであり明確な期日があるわけでもないので、放置していても大きな問題にはなりません。
しかし優劣つけがたい「やりたいこと」のひとつが後回しにされ、いつまでも手をかけられないという事実がまた自分にとってのストレスでした。
というわけで、結局マルチタスクをすることにしたのです。
とは言ってもただのマルチタスクではなく、「プリエンプティブ・マルチタスク」と呼ばれる方式です。
プリエンプティブ・マルチタスクとは?
実はパソコンのマルチタスクというのも、実際には完全に並行して複数の処理が動いているわけではありません。
ひとつひとつの処理にかける時間を細かく分割して順番に処理をすることで、同時に動いているように見せかけているケースが一般的です。
その分割された処理にかける時間を一定のものにし、外部が管理すること。
これを「プリエンプティブ・マルチタスク」と呼びます。
私たちは「任意のタイミングで自由に」作業を切り替えるべきではありません。
「突然のコスト」に私たちのメモリは対応しにくいからです。
ではどうすべきか。
その答えは、「一定時間ごとに作業を切り替える」ことです。
コストを「突然」のものではなく、「予定されたコスト」とすることで脳への負担を減らすことができます。
具体的な例を挙げてみましょう。
たとえば「ブログ執筆」「書籍の執筆」「セミナーの企画」と言う3つのプロジェクトがあるとします。
これをシングルタスクでやろうとすると「書籍の執筆」が片付くまでの数ヶ月は「セミナーの企画」に着手できません。
そもそも毎日の「ブログ執筆」に追われて「書籍の執筆」にすらなかなか手をかけられないかもしれません。
そこで、各プロジェクトの作業時間を短めに設定して順番にこなすスケジューリングをします。
例えば、「ブログ執筆」にかける時間は20分だけ。
その後5分休んで「書籍の執筆」に15分、また5分休んで「セミナーの企画」に15分、という具合です。
この割当時間と順番を守って毎日同じ時間帯に実行すれば、3つのプロジェクトを同時に確実に進行させることができます。
つまり複数のプロジェクトを本当に「同時に」行うわけではなく、一定時間ごとに作業を切り替えることで結果的に複数のプロジェクトを進行させること。
これが「やりたいこと」に「プリエンプティブ・マルチタスク」を適用するということです。
プリエンプティブ・マルチタスク実践のコツ
このシステムをうまく働かせるには、いくつかの工夫が必要です。
長期化を覚悟する
複数の作業を少しずつ進めるということは、ひとつのプロジェクト完遂までの日数はどうしても長期化します。
そのため早め早めの着手を心がけ、期日にある程度余裕のある状態のプロジェクトに対して適用するようにしましょう。
時間を必ず守る
あらかじめ処理ごとに割り当てた「一定の時間」を崩さないことが大切です。
たとえ「この作業をもう少し続けたい」と思っても、時間が来たらスッパリ次の作業に切り替えましょう。
割り込みタスクを許さない
細かく分割されたひとつひとつの作業時間の中では「シングルタスク」に徹するべきです。
その間に、予定になかった他の作業を挟むことは極力排除しましょう。
プロセス化と記録をしておく
それでもどうしても割り込みタスクが入ってしまった際に、最小限のコストで作業に戻れるように「作業のプロセス化」をしておくことが大切です。
タスク管理ツールやタイムトラッキングツールを使って、どこまで作業したのかを瞬時に判断できるようにしておきましょう。
休憩をはさむ
いくら時間と順番を守っていても、作業の切替時には少なからずコストが発生します。
であれば最初から、コストに充てる時間を確保しておくほうが無難です。
つまり作業と作業の合間に、5分ほどの休憩を予定しておくと良いでしょう。
「ポモドーロテクニック」を併用すると良いかもしれません。
ポモドーロテクニックについては立花岳志さんの以下のエントリーがすごく分かりやすいです。
タスクを25分単位で回せ! 書評「ポモドーロテクニック入門」 | No Second Life
同時に進行できるだけでなく、内容の質も上がる
私がこのやり方を思いつくヒントとなったのは、アシタノレシピメンバーのはまさんのこちらの記事です。
良い資料をつくるなら「長い期間で少しずつ」をおすすめする理由 | はまラボ
長い期間をかけて資料をつくるということは、その資料の内容は毎日「その日の自分」にジャッジされているわけです。
1ヶ月で30回のジャッジに耐えぬいた資料と、1週間で7回のジャッジに耐えぬいた資料とでは、信頼性が全く違うと思いませんか?
そもそもひとつのプロジェクトを「長時間×短期」で片付けるより、「短時間×長期」で練り上げることにメリットがあるということですね。
一日の中でひとつのプロジェクトにかける時間を短くするほうがメリットがあるなら、その分他のプロジェクトにも手をかけられるようになるかもしれない。
これが「プリエンプティブ・マルチタスク」を始めるキッカケとなったのでした。
やりたいことがたくさんあるのになかなか手をかけられないというストレスを抱えているあなた。
ぜひこのプリエンプティブ・マルチタスクを試して、「やりたいことが確実に前進している充実感」を味わってみてはいかがでしょうか?
岡野 純(@jun0424)です。
医療IT系サラリーマン/ブロガー/漫画家/2児のおとうさん。
「妻子持ちサラリーマンが仕事×プライベートまるごと楽しむための方法」を研究・実践し、ブログ『純コミックス』にて展開。 そのほかブログメディア『アシタノレシピ』連載、『タスクセラピー』コーチ。著書:4コママンガで誰でもわかる!Evernote超入門/マンガでわかる!幼稚園児でもできた!!タスク管理超入門 等。