やぁ。金曜はすまなかったね。クリスマスも近いってことで、急いでプレゼントを買いに出ちゃっていてさ。
まぁ店を閉める程ではないのかもしれないけど、そこで閉められるのが自営業のいいところさ。いずれにしても、いやすまないことをした。
さて、今日はどんな用事かな?ここには古ぼけた本ばかりで、クリスマスプレゼントになりそうなものはないけれど。
…クリスマスに喧嘩しないコツ?それはかなり漠然とした相談だね(笑)
まぁ気持ちは分からなくもないけどね。一年に一度のイベントだから、和やかに過ごしたいだろうし。
それじゃあ私からは1つだけ。言葉の大切さを少し話すよ。
どんなに付き合いが長く、お互いの事を見知っているからといって、やはり言葉は重要なんだ。以心伝心なんてのは虚言に過ぎないって、そんな小話さ。
■みかんを巡る争いの話
ある所に、仲の良い夫婦がいました。
ある日、夫が出張で遠くに行っている間に、実家からみかんが届きました。奥さんはとても心優しい人なので、届いたみかんを近所の方々に配りました。
最後に残ったのは2つのみかん。
1つは少し小ぶりだけど、よく塾されていて、とても甘みがあり美味しそうなもの。
もう1つは、大きくて瑞々しいみかん。しかし、あまり熟れてはいないようで、甘みが少なそうです。
そこへ、出張から夫が帰って来ました。
「実家からみかんが届いたの。一緒に食べましょう?」そう言って、二人でテーブルにつきます。
奥さんは夫に、夫の前に小ぶりの美味しそうなみかんを差し出します。
これは、奥さんの気配りでした。自分よりも、夫の方に美味しいみかんを食べてもらいたかった。だからこそ、より美味しそうなみかんを彼に差し出したのです。
奥さんが自分のみかんを剥こうとしたとき、夫が怒り始めました。
『なんで自分を優先して、そっちのみかんを勝手に取るんだ!出張から帰ってきて疲れてる俺に、もう少し気を配ってくれたっていいんじゃないのか?!』
奥さんは驚きます。自分は相手のためを想ったからこそ、自分より美味しそうなみかんを差し出したのに…。
そこで彼女はハッと気がつきます。出張から帰って、喉がカラカラの彼。そんな彼には小ぶりの甘そうなみかんより、大きく瑞々しいみかんの方が、きっと美味しく見えたんだと。
彼女は改めて誤解を解き、夫に大きい方のみかんを差し出しました。
■あとがき:以心伝心なんてあり得ない
これはホントに、日常の些細な出来事だ。でも、往々にしてよくあることなんだよ。
人はみんな、善意を持ってる。だからこそ、人に優しく振る舞う。特に、大切な人に対してはね。
でも、自分が考えた気配りや優しさが、本当に相手のためになるかどうかは、実のところ分からないんだ。これがコミュニケーションの難しいところだと思う。
正直な話、私もよくあるんだ。何も言わずに、スッとエスコートして、相手に気配りをしてやろうって。だから私も、言葉にせずに、勝手に行動してしまうことがある。
でもね。やっぱり声はかけた方が良い。言葉にして伝えた方が良い。
この夫婦だって、最初に「どっちがいい?」の、そのたった一言を伝えておけば、ケンカにならずに済んだんだから。
クリスマス。きっといつもよりカッコつけようとするだろうね。キミも、そして彼も。良いカッコをしたいってのは当然だ。
けれど、何も言わずにエスコートするのがカッコ良さじゃない。本当に相手のためを思うなら、もっと言葉に出してのコミュニケーションが大切なんだよ。
以心伝心なんて、そんなことはあり得ないのさ。
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