コメントボックスを設置してみたら
今月から私も大学教員。初めての授業の前に、先輩に「学生の意見を聞くにはコメントペイパーがいいよ」とすすめられたので、A6サイズの裏紙を配布して、ボックスで回収してみた。やっぱり新米教員だし、「どんなささいなことでもいいから書いてくださいね」といってみた。どきどき・・・どんなのが入っているかな。おお、100枚近く入っている。
”リラッ○マ大好きですか”
ええ、そうです。ボックスもリ○ックマの箱だしね。
”早口でわかりません(><)教科書とどこ対応しているのか分かるようにしゃべってください”
ごめんなさい。ゆっくりわかりやすくできるよう、がんばります。ええと、最後の一枚は・・・あれ、なんだこれ。
”先生、授業に関係のない質問でもいいんですよね・・・哲学的な質問でもいいですか?”
えっ?それで、肝心の質問は?しょうがないので研究室に呼び出してみよう。泣きそうな顔になった女子学生と、やれやれといった雰囲気の男子学生がやってきた。
学生生活には悩みがいっぱい
「ようこそ、ぱうぜ研究室へ。とりあえず、コーヒーでも飲む?」
挽き立てのコーヒーの香りとクッキーの甘さで少し気分が落ち着いたのか、ポニーテールの快活な印象をぐしゃぐしゃにするくらい落ち込んでいる女子学生は、ぽつぽつと話し始めた。
「はじめまして、明日香っていいます。 センセが何でも書いて良いからね、っていうから、つい、思ったことをそのまま書いてしまいました・・・」
その割には捉えどころがないんだよなあ、うーん。困った顔をしていると、もっと困った顔をした男子学生も口を開いた。
「オレ、教室でたまたま隣で座ってたんだけど、なんかうなり声がうるさいなあと・・・心配なんで、ついてきました」
たしかに、この泣き顔で研究室来られたら、初日から大惨事だわ。ありがとう。彼の名前は進吾くんというようだ。
「もう大学二年生なのに、勉強よくわかんなくて。サークル頑張ってたんですけど、もうすぐ引退だし、そろそろ勉強ちゃんとやらなきゃいけないのわかってるんだけど・・・ぐすん」
あ、ついに泣いちゃった・・・どうしよう。たしか、明日香さんはチアリーダーで頑張っているはず。文化祭のステージではつらつとしていたのを見た気がする。チアリーダーを応援することになるとはなんだか奇妙な話だな。
「ほら、明日香さん、泣いてばかりじゃ分からないから、もうちょっと聞かせてくれる?」
「そうだよ、たしかもう一枚持ってたよな、お前。あっちを出したら良いんじゃないの?」
ん、もう一枚あるの?
「はい、実は、最初に書いたのはこんな質問だったんです」
”大学一年通ったけど戸惑ってばかりです。答えは一つじゃないんですか?”
この問題は根が深そうだ。ゆっくりコーヒー飲みながら答えていくことにしよう・・・。
◇ぱうぜセンセのメモ◇学生の質問は10年前の自分との対話
大学生の頃の悩みって、そういえば10年前の自分も感じていたことばかり。ここはひとつ、10年前の自分と対話するつもりでやってみよう。
編集後記
はじめまして、ぱうぜ(@kfpause)です。某大学で10月から教壇に立っています。授業内容以外の質問にも大変興味深いものが多いので、このような企画を立ち上げてみました。なお、取り上げた質問の主には許可を得ています。また、会話は再構成していますので、特定の個人とは関係がありません。社会人の皆さんも、学生のときの気持ちを思い出しながら読んでいただければ嬉しいです。
なお、アイキャッチ画像はアシタノメンバーのjun(@jun0424)さんに書いていただきました。大学の先生って角帽のイメージなんですかね・・・実際はかぶっていませんよ(笑)。指し棒と黒板は本当に使っています。
また、ぱうぜセンセのコメントボックスでは「バーチャルコメントボックス」を設けております。Twitterで #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。いただいた全ての質問にお答えできるか分かりませんが、とりあえず試してみることにします。似たような仕組みとして「ビストロ・アシタノ」もありますが、ビストロはアシタノメンバーみんなで答える形式になります。どうぞ両方ご愛顧ください。
2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/