【前回のおさらい】突然研究室に押しかけてきた新聞部。新任教員の名前をすでにウェブ検索していたみたい。ブログやSNSを使いこなしていることを察知したのか、こんな取材をぶつけてきた。
“SNSとの接し方は?”
「学生に向けてのコメント、ということでよろしくお願いしますっ!」とのこと。うん、これはいつも考えていることだから答えやすいぞ。
(前回のお話はこちら)「何時間勉強すればいい?」が”間違っている”ワケとは
SNSにもいろいろ
「もっともねえ、SNSって言ってもいろいろあるから、まずはどの話をするか決めようか。ええと、あなたは」
「あっ、申し遅れました新聞部の文哉(ぶんや)です!」
ブンヤ・・・ホント、新聞部向けの名前してるなあ。
「明日香さん、進吾くん。SNSとかブログとかやってる?文哉くんも自分でやってるのは何かな」
「ええと、私はサークル仲間でLINEを使っています。Twitterは登録だけして、ぱうぜセンセのアカウントをみてます」
「俺は、就活に有利だって聞いたからFacebookやってます。Twitterは…ええと、これは見つかるとヤバイかも・・・」
「新聞部には公式twitterとFacebookページがあります!センセもぜひRTや”イイね!“をお願いします!」
なるほど。明日香さんは仲間とLINE、進吾くんは就活も睨んだFacebookと、気晴らしのTwitter、文哉くんは新聞部としてのアカウント運営をしているのね。
「残念ながら私自身はTwitterとFacebook、そしてブログしかしていないから、今日お話できるのはその範囲を念頭におくよ。昔はmixiもやってたけど、今はもう放置してる。ところで、ブログはやったことありますか?」
「文化祭の活動報告でブログを使っていますけど、なんか、更新頻度がどんどん落ちてますね」
「Twitterとかで流したほうが速いもんな」
なるほど。もうSNSが流行ってからの世代だから、ブログについての考え方も違うんだね。
twitterの仕組みをおさらいしよう
「twitterはみんな使っているみたいだから、基本的なしくみはわかっているよね」
「はい。リツイート(RT)とか、メンション(@)とか、ダイレクトメッセージ(DM)とか、お気に入り(Fav)とか」
もしも、基本的な仕組みがわからない人がいらっしゃったら、こちらの記事をどうぞ。
脱初心者のためのTwitterの設定と使い方(前編) (1) 公開ツイートのしくみ | マイナビニュース
図解がわかりやすいです
「それぞれの公開範囲や情報伝達のありかたとか、きちんと確認しておこうね」
「そうそう、非公開になるDMと間違えて@で飛ばしちゃったことがあって、すごく恥ずかしかったなあ」
それ、よくやるミスだよね。本当にあぶない。そういえば、さっき聞き捨てならないコメントがあったなあ。
ただの愚痴にしてはもったいない
「さっき、進吾くんが『twitterのほうは見つかったらヤバイ』って言ってたけど、具体的にはどういう使い方をしてるのかな」
「ええと、別に“バカッター”な非常識写真をアップしたりはしてないっすよ。講義のあとに感想を書いたりとか、その・・・。まあ、匿名なんで」
「大事なことを言っておこう。TwitterやFacebookでの情報発信は、どんなに匿名にしていても積み重ねればゼッタイにバレる」
【定期告知1】学生のみなさん、あなたのツイートは思った以上に先生や(将来の)就職先の皆さんが見ています。匿名や鍵付きでも、色々な情報の積み重ねですぐにばれます。どう見られているのか、いつも意識しながら楽しいTwitterライフをお過ごしください。
— 横田明美 (@akmykt) 2013, 12月 21
「えええ。でも、俺、鍵アカウントっすよ」 「鍵アカウントでも、リプライを飛ばしている相手が公開なら、やりとりから推測できる。また、うっかりフォローリクエストを承認したら、知り合いだったってこともある」 「どんな時間にどんなユーザーとやりとりしているかとかでわかっちゃうんですよね」 「実際、教員は自分がTwitterでどう噂されているか把握していることが多い。Twitterやってなくても検索をかけることはできるしね」
【定期告知2】教員は、学生のツイートに気づいて凹んでいたりします。科目名や愛称でツイートしても読む人が読めばわかる、それがTwitter。先生に伝えたいことはぜひコメントペイパー等でお願いします。そのひとことが授業を改善する助けになります。 — 横田明美 (@akmykt) 2013, 12月 21
文哉くんはすでにぱうぜ実名アカウントの【定期告知】ツイートを読んでいたようで、ふんふんと頷いている。それじゃあ、まだ彼が知らない例を紹介しようかな。 「ちょっと恐ろしい例を紹介しよう」
うちでは、1年生前期必修の「国際関係論」の初回で、ドラえもんの「そらをじゆうにとびたいな」を大音量でかけて、直後に検索して、一本釣り(晒しRTはせず、ふぁぼだけ)して、翌週、「匿名でも簡単に特定されるんですよ」とハイ・コンテキストな懇切丁寧な指導をしています。 — Yuki Asaba(浅羽祐樹)bot (@YukiAsaba) 2013, 12月 21
(なお、本連載掲載にあたり、浅羽祐樹先生の許可を得ています)
「え、これってどういうことですか」
「わからないかな。ふぁぼ、というのは“お気に入り“にする、ということだよね」
「ええ。☆をつけるんですよね」
「☆をつけただけだと、自分のフォロワーには拡散しないけど、発言主本人には伝わる」
「通知欄に“あなたのツイートがお気に入りにされました”って」
「授業中に授業のツイートをしていたことが、教員の写真入りアカウントから“見てるぞ”とふぁぼられて」
「そして翌週の授業で注意される…なんとまあ」
「まあ、一回痛い目に遭わないと伝わらないんだよねえ」
SNSでの振る舞いも見ています
「匿名でも鍵つきでもばれるときはバレる、となると、どうしたらいいかわかんないっす」
「なんだかコワくなってきました」
「まあ、バレても困らない程度のことだけをかいておくべきなんですよね」
「本当に誰かを傷つけかねないようなことばは、webに乗せるべきじゃないね」
どうしてもはき出したくなったら、アナログなノートとかにしましょう。
「でも、突然知らない相手から罵倒されることもあって、それにかまっていたらつい・・・」
あれ、文哉くんも修羅場をくぐっているのかな。
【定期告知4】作らないでも良い敵は、作らない方が良いと思います。SNSでは、当該相手方だけでなく、いろんな人が、「貴方が他者に対してどう振る舞うか」のサンプルとして見ています。
— 横田明美 (@akmykt) 2013, 12月 21
「Twitterなどでは今までの発言も見ることができるから、“この人どんな人?”という疑問を持ったときに、いままでの振る舞いを見ることができるんだ」
「たしかに、知らない人からフォローされたら、どんな人かな、って辿ってみたりしますね」
「だから、匿名であっても充分な信用の蓄積ができる。人に対する愚痴や攻撃的な発言ばっか言ってたりするのは、ちょっともったいないと思うよ」
「Facebookでも、思わぬつながりがあったりしてびっくりしますね」
「コメント欄に投稿している人をみると、なんでこの人とこの人がつながってるんだろう、って思うこともあるよね」
他の人にどう振る舞っているのかが可視化される点は、危なっかしいと同時におもしろいところだよなあ。
情報収集手段/発信手段としてのSNS
「辿っていける、といえば、びっくりしたことがありました」
「非公式リツイートでまわってきたコメントにびっくりしたら、よくよく読むと元の発言主はそういう趣旨じゃないってこともありました」
単に同じ情報を流す公式RTと違って、非公式RTは「引用」だから、改変されている恐れもあるんだよね。
「怒りにまかせて元発言主に突撃する前に、真偽を確認しなきゃダメですね」
「そんなとき、どうしたらいいですか?」
「一番大事なことは、その情報にソース(情報参照元)がついているかという点だね。これについては、私も失敗したことがある」
「そのニュース、ソースついてる?」デマの片棒を担がないために – カフェパウゼをあなたと
ドイツで報じられた食中毒事件について。
ちょっと長いのでまとめると、ドイツ語で報じられたニュースについて、元サイトのURLを付けないままツイートを拡散してしまったのです。ドイツ語を読める人ばかりじゃ無いけど、一人歩きするのは危険ですね。
「twitterの速報性は非常に有益だけど、あとで検証できないと困ってしまうよね」
「元発言主までちゃんと辿る、というのも、ソースの確認という面からは大切ですね」
「ソースまで示している記事だったらきちんと参照して対応すべきだし、あやふやなのなら“事実だとしたら大変だ”とコメントするに止めるか、そもそも反応しない、というスルースキルも大事だよ」
「そういうときはRTのかわりにそっとふぁぼるだけ、というのも大事ですね」
そう。そういうこと。
「他にも色々な使い方があって、Evernoteと組み合わせてふぁぼをメモとして使ったり、ツイートをまとめるtogetterというサービスでハッシュタグ付きツイートをまとめたりすることもできるけど、ちょっと応用編になるから、今日はここまでにしようか」
「はい、面白い紙面になりそうです!ありがとうございました」
「新聞部も、ハッシュタグとかを使って先生にインタビューするとか、楽しい企画を打ってみてよ」
参考までに、私が作ったり、関与したTogetterまとめのリンクを張っておきます。
「kfpause」さんのまとめ – Togetterまとめ
実況したり、イベントを企画したり、ゼミ構想をまとめたりしています。
「ゼミナビ/ゼロキョリ2013」ゼミ担当講師へのインタビュー第1弾・横田明美先生 – Togetterまとめ
ゼミ開講前に学生にTwitter上でインタビューされました。
長期計画をたてよう
ようやく落ち着いたのか、みんな納得した様子で帰っていった。ふう。長いオフィスアワーだったな。
~一ヶ月後~
「センセ、もう一度質問してもいいっすか」
授業も落ち着いてきたある日、今度は困り顔の進吾くんに明日香さんがつきそってやってきた。
「センセに言われて一念発起して、自分で勉強やバイトとかの計画を立てているそうです」
「きちんと毎日の記録をとって、無理のない範囲でできる限りやってみたっす」
それなら良いことじゃないか。
「でも、うまくいかないんです・・・逆算方式は、漠然とはイメージつくのですが、実際に計画をたてると前半が無理目なスケジュールで、後半は何を具体的にしていいかわからず、理想としてはこんな状態にいたいという目標だけかがけて終わってしまいます。どうしたら、機能的な計画ができるんでしょうか。」
この質問は、ask.fm からいただきました(質問者は匿名です)。
計画のたて方が下手くそです。逆算方式は、漠然とはイメージつくのですが、実際に計画をたてると前半が無理目なスケジュールで、後半は何を具体的にしていいかわからず、理想としてはこんな状態にいたいという目標だけかがけて終わってしまいます。どうしたら、機能的な計画がたてれるでしょうか。ちなみに司法受験生です。 | ask.fm/kfpause
「な、長いな。要約して。」
“実際に長期計画を立てるときのコツは?”
立てるときのコツ、っていうのでは、またピントがずれているんだよな。よし、これは年始にむけて答えることにしよう。
◇ぱうぜセンセのメモ◇SNSは世界に開いた窓
SNSっていうのは、公開範囲を制限していようが匿名であろうが「世界に開いた窓」なんだよね。いろいろな様子を覗くことが出来る代わりに、世界からもこっちの中身を覗かれる。だから、せめて窓をあけた部屋くらいは整理整頓しておくのと同じように、どう見られるかも意識しながら使っていけばいいんじゃないかな。
あ、実名アカウントと匿名アカウントを両方作った理由は、「学生の皆さんもレベル分けしてアカウント運用したほうがいいですよ」というアナウンスメント効果(真面目な講義情報だけ読みたい人は実名アカウントだけフォローしてね、という意味)なんですけどね、それを言いそびれたなあ。
編集後記
ついに実名ツイートを引用してしまったぱうぜ(@kfpause)です。今回は実際に学生にいただいた質問です。いやはや、世の中には色々な先生がいまして、他にも「恐ろしい」例を聞いております。まあ、使い方に気をつけていれば非常に楽しいツールですので、皆さんの参考になれば幸いです。
また、次の質問はask.fmからいただいた質問です。こちら経由のものでも、アシタノレシピ向けのものはこの連載で取り上げます。ただ、ask.fmだと匿名のため、質問者にこちらから質問することができません。どうしても匿名で質問したい場合は別ですが、できればいつも紹介している以下の要領でおねがいします。
ぱうぜセンセのコメントボックスでは「バーチャルコメントボックス」を設けております。Twitterで #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。いただいた全ての質問にお答えできるか分かりませんが、とりあえず試してみることにします。似たような仕組みとして「ビストロ・アシタノ」もありますが、ビストロはアシタノメンバーみんなで答える形式になります。どうぞ両方ご愛顧ください。
2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/