「ぱうぜセンセ、ごめんなさい・・・」
中間レポート第一回提出の日。せっかくレポート仕上げたのに、提出できないという泣き顔の学生が現れた。なんと、前回良い質問をくれた映二くんだ。
「・・・うん。どうしてこうなったのか、振り返ってみようか」
「プリンタやパソコンって、どうして提出直前に壊れるんですかね・・・」
疑問というか、反省だね。ほかの学生も気の毒そうな顔をしているから、みんなで大反省会だ。
(前回のお話はこちら)「信用できる本ってどう見分けるの?」情報の目利きになるには
提出日の悲劇
「映二くんは本を早めに見つけようとしてたし、順調だったのにね・・・途中で見せてもらったけどすごかったし」
助け船を出したのはさくらさん。ピアレビューをしたペアを組んだんだね。
「うん、何度かさくらさんとピアレビューをしたおかげで、すごく良いモノが書けたんですよ」
レポート”ピアレビュー”のすすめ~提出前に「他人の目」をいれておこう
誤字も構成ミスも見つかるよ
「そのときはどうしてたの?」
「印刷したほうが誤字が見つかりやすいってぱうぜセンセが熱弁していたので、お互いに印刷して持ってきたんです」
そういって、さくらさんが金曜日段階の映二くんレポートをみせてくれた。うん、良く出来てる。あとちょっと誤字を直せば凄く立派だ。
「金曜日の放課後に最後の回をやって修正案を決めたので、あとは月曜の朝にプリントして持ってくればおしまい、だと思ったのに・・・」
「プリンタが壊れた、と」
「はい・・・最初、A4の紙がなくなったのでコンビニに走ったら、今度はブルーのインクがないのでしょうが無いからモノクロ印刷にして、そうしたら今度は突然の停電で」
紙も、インクもないんだよ、と。そしてプリンタ自体がおかしくなっちゃったのね。
「プリンタがだめなら、大学で印刷すればよかったんじゃないの?」
「実は、停電のときにデータが壊れちゃって・・・」
それを聞いたクラスメイト、全員顔を青くしている。多かれ少なかれ経験があることのようだけど、ここまでフルセットのは珍しい。
「ええと、とりあえずさくらさんの手元にあるものを提出、ということで許してあげるから、ここからはどうすればよかったのかをみんなで考えよう」
せっかくなので、クラス全員の課題として考えてみよう。
Bプランとバックアップ
「まずね、こういう〆切があるものについては機械関係のトラブルは起こるもんだ、と腹をくくったほうがいい」
なぜか、大事な提出物の時に限ってプリンタは壊れるしネットはつながらなくなるしデータはすっ飛ぶものなのです。
「起きてしまうものは仕方がないから、バックアップを作っておいたり、代替策を用意しておくべきだね」
「ああ、よくBプランとかいうやつですね、Aプランがうまくいかないときに発動する、というか」
そういうこと。もう頭切り替えて、多少コストがかかってもどうにかできるプランを用意しておこう。
「今回は、プリントアウトの問題と、データそのものの問題ですね・・・」
「他のみんなも、どうすれば良かったのかを考えてみようか」
プリンタのBプラン
「まず、プリンタについてはどうかな?」
「映二さ、大学に来てから印刷するってつもりはなかったの?俺はさっきパソコン室で印刷してきたんだけど」
「データが飛んじゃったからだめだったけど、データさえなんとかなれば、それはありだね」
「でも、あたしが行ったときパソコン室、授業が多くてほとんど使えなかったよ」
月曜の1限はパソコン関係の授業が多いみたいだね。このゼミは月曜2限だから、それだと間に合わない。
「パソコン室じゃなくて、図書館の二階でも同じやり方でプリントできそうだよ」
「そっか、大学だといろんなところでプリントできるのか・・・」
「・・・でも、大学のネットワークが落ちてたらどうする?」
どこにも用心深いひとはいるものだ。あれ、クラス全員黙り込んだから、ここは助け船を出そう。
「実は、コンビニでもプリントアウトができる」
プリンターいらず?コンビニのプリントサービス一覧 – ゆめいろデザイン
2013年段階の各社サービスがまとめられています
「ちょっとお値段がはるけど、今回は五枚だからなんとかなるかな」
「これらはpdfだけのところが多いね。pdfデータさえ持っていれば、なんとかなった可能性があったのか・・・」
データのバックアップ
「データのバックアップについてはどうだろう」
「パソコンだけじゃなくて、USBにも保存しておけばよかった」
「持ち出しても大丈夫なデータなら、クラウドに保存するのもありだね」
この辺はちょっと難しいので今回は割愛しますが、ぱうぜセンセは機密文書ではない論文を書いているときはDropboxとEvernoteを使っています。ローカルにもクラウド上にも保存されるような設定です。
「いや、機密文書じゃないっていうなら、もっと賢い方法があるよ!」
あ、さくらさんがひらめいたようだ。
「あたしたち、メールでお互いに送るようにしておけばよかったんだよ・・・そうしたら、映二君のパソコンが壊れても、あたしのパソコンから印刷できたんだもの」
「そっか、そうしておけばさくらさんに電話して泣きつけばなんとかなったんだね」
この先にもよくあること
「今回はまあ、ピアレビュー・バージョンが残ってたからまだ良かったね。課題をやっていることはわかったから、その印刷物をさくらさんからもらって、復元してごらん」
「そっか、一応はバックアップの役目を果たせたんですね」
「この先、卒論を書いたり提出物を書いたり、大事な場面はたくさんある。でも、どこかでこういう落とし穴があるから、みんな気をつけよう」
「次からは気をつけます」
「・・・今回のことでみんなもよく分かったね。次の提出物からは温情措置ないから、そのつもりで」
あ、みんな震えだした。次は全員提出できるようになるにちがいない。
◇映二くんのノート◇
「プリンタとパソコンは提出直前に壊れるもんだ」
1.プリンタのBプラン
(1)学内パソコンの場所を沢山おぼえておく
(2)コンビニでのプリントアウトを試してみる
2.データのバックアップ
(1)外部記憶媒体(USBとか)
(2)クラウドサービス→今度詳しい人に聞いてみよう
(3)ピアレビューのときに送っておく
◇ぱうぜセンセのメモ◇
まあ、温情措置というかなんというか、失敗できるうちに失敗してもらえてよかった。
だいたい一度はやらかすんだよね、これ。以前「新人大学教員あるある」を集めたときにも、先輩達からいただいたアドバイスだったなあ。
#新人大学教員の心得 まとめ – Togetterまとめ
「印刷機・コピー機確保を最優先。ちんたら並んでると君の直前でどでかい故障が起こるぞ」
編集後記
20人に1人はやらかしますね、これ・・・。仮提出版を出せなかった学生が本当にいたので、当該学生の許可もとって再構成してお送りしております。
ぜひ皆さん、「バーチャルコメントボックス」に質問をお寄せください。Twitterで @kfpause宛てにツイートしていただいても結構ですし、 #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。
2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/