人生の活路を拓くために未来の変化を想像する ~忙しいビジネスパーソンのための「軍師の心得(その9)」~

「チャンスをつかむためには自ら行動しないといけないよ」とよく言われます。しかし一体どこに向かって進めば良いのか、或いは何をどう行動すれば良いのか分からないというのが普通だと思います。進む方向を誰かが教えてくれることは稀です。そのため確実な情報が手元にないまま将来の行動計画を練ることになります。

しかし、実際はそれで良いのかもしれません。

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今回は「不確実な情報を扱って成功した例」として、戦国時代の「城の水攻め」のお話を紹介します。

今でこそ次の事例は成功物語として大々的に取り上げらますが、実際の現場ではどうだったでしょうか。もしかしたら当事者は「失敗するかもしれない」と冷や冷やしながら行動していたかもしれません。そのあたりの人間心理も想像しながら読んで頂けると面白いと思います。

不確実な情報から「未来の変化」を読む

ご存知の通り、戦国時代の「戦さ」において勝利を手にするためには、敵の城を攻める必要がありました。そのため通常は、多くの兵士を城門から突入させ徐々に城の中心部へと攻め入ります。しかし戦国時代の軍師「黒田官兵衛(くろだかんべえ)」は新しい方法で城を攻めました。

それは「城の水攻め」です。敵城の周りに大規模な堤防を建設した後、近くを流れる川の水をせき止めてしまい、城の周りをその水で覆うのです。これにより、城の中の敵軍は城内に閉じ込められ身動きが取れません。城外には一切出られないので城内の食料が尽きれば最後という訳です。岡山県の「備中高松城を水攻め」が有名ですね。

この水攻めが画期的だった点は、「気象」「地形」「労働力の確保」の3点において新しい試みを黒田官兵衛が採用したことです。

第一に「気象」についてです。気象関係の技術が進んだ現代社会でこそ数週間程度先まで天気を予測できます。(但し、現代の天気予報も時々は外れます。)

一方で当然ながら戦国時代にはそのような天気予報の体系的な知識はありません。にもかかわらず、黒田官兵衛は6月の時期に岡山県で雨が降り続くことを予測し、莫大なお金をかけて「城の水攻め」のために大規模な堤防を建設しました。仮にですが、もしも雨が降らなければ黒田官兵衛は「笑い者」になっていたかもしれません。すなわち、これは一つの賭けだったと言えます。

第二に、黒田官兵衛は広い範囲の「地形」を利用しました。敵城の近くの川(足守川)が氾濫した場合にどのように水が流れ、どこに水が溜まるかを予測したのです。もちろん戦国時代には地形の高低を正確に把握する道具などありません。そのため山の上から見た地形や地元民からの情報をもとに分析し、川の水を堰きとめるために長い堤防の建設位置を決定しました。もしもこの堤防の建設位置を違えれば、せき止めるはずだった川の水はそのまま流れ去ってしまいます。これも冗談では済まされない状況ですので、黒田官兵衛はここでも大きな賭けをしたことになります。

最後に「労働力の確保」についてです。通常、陸地での城攻めの際には自軍の兵士が戦います。一方で、「城の水攻め」には大規模な堤防を建設するためにより多くの労働力が必要ですが、黒田官兵衛の軍隊には十分な数の兵士がいませんでした。そこで敵のエリアに住む農民たちに報酬を支払い、堤防の建設を進めることにしました。これまで親交のなかった現地の農民たちに報酬を払って手伝いを依頼すること。これは、まるで「クラウドソーシング」を先取りするような方法です。

このように「城の水攻め」は戦国時代における普通の攻め方とは大きく異なる方法が採られました。そして、それは様々な不確実要素を背負っての作戦です。しかし、これを見事にやり遂げた黒田官兵衛は結果的に軍師として更に名声を高めました。

翻って、現代社会でも同じ考え方を利用することできます。すなわち、確実ではなくても「ある程度の予測」を立てること、そして身近な人との接点を活用して何かを実現することです。これにより、じっと立ち止まっている人々よりもチャンスをつかむ可能性を高めることができます。

是非、不確実要素があることを前提に、未来の変化を想像してみてください。

■オススメのトピック・書籍

今回は「未来の変化を予測する」ことに繋がる書籍を紹介します。この書籍が出版された直後の2014年8月に「日本政府が燃料電池車の優遇政策を準備中」というニュースが流れました。

「2025年の世界予測–歴史から読み解く日本人の未来」 (著)中原 圭介

ちなみに上記と似たような書籍名で、怪しい経済学者の書籍が幾つかありますが、それらはオススメいたしません。(笑)

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