今日はぱうゼミのみんなでゼミ合宿。さて、温泉の前に真面目に勉強しないとね。
「さて、みんなレポート課題をやってもらったんだけど、どうだった?」
「実は、きちんと仕上がらなかったんです、どうしていいかわかんなくて」
あれあれ、だったら相談してくれれば・・・まあ、夏休みでなかなか大学に居なかったからなあ。
「きっちりした文章になかなか書けない時ってどうしたらいいんですか?」
ああ、これはみんな卒論を書くときにつまづきそうだ。せっかくだから、ゼミ生みんなで考えてみよう。
(前回のお話はこちら)「コメントボックス」の難しさ~ぱうコメ番外編その1
やっかいな「矢印」
「ええと、今回のレポートっていっても、夏学期に各自報告した内容をもとにレポートにしてね、っていう話だから、ネタはあったんだよね」
「はい、書けなかったのはそういうことじゃないんです。ほら、ここの部分・・・」
落ち込んでる明日香さんのレポートは、最後の考察部分だけ・・・あれれ。
「報告したときは手元のメモでしゃべったんです。住民側と行政側が争っている部分を説明したかったんですけど」
ほんとだ、文章になってないね。最初の一行目のあとに、下矢印があって、次の行が始まって、また下矢印。
「まあ別に、俺たちは報告聞いてるからわかるんだけどねえ」
進吾くんが助け船を出そうとしているけど、ここはもうちょっと踏み込まないとダメだな。
「じゃあ、君は明日香さんの『↓』の意味、どういう風に捉えたの?」
「ええと、時間の経過を示してるから、『それで』くらいの意味っすかね」
「うーん、ほんとにそれだけかな?」
「いや、実は、矢印の前と後だと別の立場を表してるんですよ…さらにいうと、前から2つめまでは第一審まで、3番目と4番目は控訴審、それ以降は最高裁でして」
さっき、住民側と行政側が争っている、って言ってたもんね。しかも、日本の裁判は三審制だ。
行間を埋めるように書く
「つまり、フィーリングだけで矢印とかを多用すると、伝わりきっていないことがあるんだね」
「そうっすね、俺も勘違いしてたっす」
「きっちりした文章にしないといけないんですね…で、どうしたらいいんでしょうか」
「ひとつは、『これ、どういう意味で矢印使ったんだっけ?』と問い直してみることだね。最初はフィーリングでモリモリ書いて良いけど、いざちゃんとした文章にするときはそれをひとつひとつ丁寧に埋めていかなきゃいけない」
さっきの例だと、矢印は単に時系列を表したものではなくて、立場の変更も意味しているのだから、文章の中に「第一審で原告が~~と主張した。」などと、補っていく必要があるよね。
「うーん、自分でやっててなんとなくしかわからなくて…」
読み手に話しかけるつもりで
「自分ひとりでこねくり回しているとどこが舌足らずなのかわからないんだったら、誰かに見てもらうと良いよ」
今回だって、進吾くんに説明してみるとようやく考え違いに気がついたんだよね。
「そうだ、さっきから気になってたんだけど、これ、何の『取消請求』?」
「あー、収用決定、です…説明が落ちてましたね」
「ここはいろんな手続が続くところだから、『何の』に気がついたのはさすがだね、進吾くん」
「やっぱり、人に説明しようとすると、書き足りてない要素とか出てきますね」
逆に回りくどいところにも気がつきそうだね。
「一人できっちり埋められる人はいいけど、そうでも無い場合は、誰かに説明するつもりでやってみるといいね」
「既に出てきている情報だけで読み進められるのかどうかとか、大事ですね」
「卒論執筆に向けて、だんだんとレベルがあがってきたね。さあて、ゆっくり温泉に入って疲れを癒やすことにしましょう・・・」
「「はーい」」
◇ぱうぜセンセのメモ◇
この問題に明確な答えはないから、対処療法で指導していくしかないなあ。「読み手のことを考えろ」とよく言われるけど、具体的にはこんな感じの問題まで含まれるよねえ…むずかしいなあ。
編集後記
夏合宿で、既に報告した内容を追加調査を加えてレポートの形にブラッシュアップしなさい、という課題を出したところ、こんな話題になりました。今回もゼミ生に多謝。
なお、この原稿、出張先のドイツで書いております。ネットさえつながればどこででも書けるんですねえ…。ドイツだとお風呂がないので、ぱうぜセンセたちが羨ましいです。
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2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/