【前回のおさらい】思った以上に忙しい学生生活に目を回した1年生のさくらさん、つばきさん、映二くん。ぱうぜセンセは「やりたいこと・やるべきことを全て書き出す」という「下ごしらえ」を終えた後、3つの方策について話そうとしています。1つめは「キャパシティを増やす」。でも・・・
「結局やることは減ってないんですよね」
「トリガーをみたら思い出したりして、むしろ増えてるじゃないですか」
「やることいっぱいどうしよう?」
大学生のタスク管理編、まだまだつづきます。
(前回のお話はこちら)やることいっぱいどうしよう?その2:キャパシティを広げるには
書き出した「やりたいこと」「やるべきこと」を見渡してみよう
「まあ、慌てないで、いったん書き出したやりたいこと、やるべきことを見渡してみよう。ええと、他の人に見せても大丈夫そうな人は・・・」
「あ、相談しようと言い出したのは私なので、ぜひ使ってください」
それじゃ、遠慮無くさくらさんのノートをみることにしようか、どれどれ・・・
- 中級英語の授業でスピーチ!
- 家庭教師バイトで小テスト、問題作らなきゃ
- サークルの活動報告書かないと
- まちづくり入門で紹介されてた本読みたいな
- サークルのクリスマス企画の準備しなきゃ
- スマホ調子悪い
- 留学説明会
うーん、これは・・・
「なんか、足りないな・・・」
「やりたいこと、やらなきゃいけないことを書き出していったら、こんな感じになりました。だめ、ですか?」
急に張り詰めた空気に。重い口を開いたのは・・・つばきさんだ。
「さーくーらちゃん、ちょーっと言いたい事があるんだけど・・・」
「あ、やっぱバレた?」
あれれ、なんか様子がおかしい。
「この活動報告書って、文化祭の出し物のアレ、だよね」
「は、はい・・・」
「いきなりどうしたの?つ、つばきさん怖いよっ」
映二くんまでびびっている。
「じ、実は、提出期限がおとといなんです、11月26日」
「あたし、同じサークルのWebサイト担当なんですよ。活動報告書が揃わないと記事にできないのに、どうも集まりが悪いなーって思ったら、隣で止まってたのね」
ありゃりゃ、怒られるのもしかたないか。
「まあ、今のつばきさんの一言で、大事なことがわかったね」
「はい、これ、〆切を書かないとダメですね」
何か足りないリスト
「まあ、やらなきゃってことを書き出すときにはあまり気にしないでも良いけど、いったん出てきた後は加工しよう」
「〆切を書き添えるってことですか?」
「まあよく言われるのは 重要度と緊急度の2つの軸で整理しろ、ってことだね。有名な『7つの習慣』って本で提唱されている」
さいきん新訳が出たベストセラー/ロングセラーだね。
「アシタノレシピでも何度も取り上げられているから、とりあえずJMatsuzakiさんの解説をよんでごらん」
タスクを実行に移す時は”緊急度”と”重要度”で4つに分類する(前編)
「時間管理マトリクス」についての丁寧な解説です
「ふええ、なんだか難しそう・・・」
「慌てないで読めば、そこまで難しいことを言っていないよ。でも、まあ要旨だけ述べようか」
緊急性って何だろう
「緊急性っていうのは、JMatsuzakiさんは『やらなければならないこと』って言ってますね」
「まさにさっきのつばきさんの指摘の通りだね」
「だってー〆切守ってくれないとあたしが困るじゃないですか」
「ごめんなさい。ええと、脇に〆切を書いていけばいいですかね」
「そのときに気をつけて欲しいことがあるんだけど・・・まあいいや、一度に言っても分からないから、とりあえずやってみて」
「・・・はい、書きました。緊急性ってようするに〆切決まってるモノ、ってことですか」
「まあ、目の前で『はやくやってよ』ってせき立てているもの、だね」
重要性って何だろう
「それじゃ、重要性は?」
「やることに重要な意義があるかどうか、っていうことですね」
「あ、そうか、『緊急じゃないけど重要』ってものがあるんだ」
「そう、それをこの『7つの習慣』は『第二領域』といっている。さっきの記事だと『備え』と言い直しているね。
この本の要点は、ここにあるんだ。なかなか手が付けられないし誰にもせっつかれないけど、将来の自分にとって重要なことに振り向ける時間をなるべく多くしよう、ってことだね」
「うわー、それ全然できてないや・・・」
あれ、つばきさんまで落ち込んでいる。
「まあ、ムズカシイことや具体的なやり方はほかの記事もみてもらうことにして、このやりたいこと・やるべきことリスト、加工してみようか」
「はい、他の人にも〆切と重要度がわかるようにしてみますね、ええと、今日は11月28日金曜日、だから・・・」
- 中級英語の授業でスピーチ!【授業は来週の金曜だからあと7日】【必修単位とるため重要】
- 家庭教師バイトで小テスト、問題作らなきゃ【カテキョは月曜だからあと3日】【お金稼ぐの大事】
- サークルの活動報告書かないと【〆切過ぎてる!】【大学生活のメインと思ってるサークル】
- まちづくり入門で紹介されてた本読みたいな
- サークルのクリスマス企画の準備しなきゃ【クリスマスはあと25日後】
- スマホ調子悪い【〆切は・・・ないかな?】【まだ電源とかは大丈夫だけど】
- 留学説明会【来年1月頭らしい】【留学はできたら行きたい】
もう少し掘り下げるための質問
「・・・ええと、ヤバイねこれ」
うん、ちょっと絶望的だ。緊急アラートと重要メッセージがてんこもり。
「さっき、〆切書こうとしたときにぱうぜセンセなにか言いかけてましたよね」
ああ、言いそびれてた。
「〆切を思い浮かべるときは、同時に『ゴールはどのあたり?』『これについて次は何するの?』『何を・どこを・だれを使うの?』『いったん見せる〆切は?』と考えて欲しい」
- 『ゴールはどのあたり?』
- 『これについて次は何するの?』
- 『何を・どこを・だれを使うの?』
- 『いったん見せる〆切は?』
たぶん、この質問の意味がわかれば、もうちょっと楽になるはずなんだ。
「どういうことですか?」
ええと、視点を変えてみよう。さくらさん、泣きそうだもん。
「・・・正直に答えて欲しいんだけど、今回なんでサークルの報告書が遅れちゃったの?」
「ええと、始めてのことで、どういう方向でいったらいいかよくわかんなくて、他の人より短かったらどうしようとか・・・うじうじ悩んじゃって、私凝り性なのに仕事おそくて」
「やっぱそんなことだろうと思った。とりあえず見せてくれれば良いのに」
「・・・えっ?」
「じゃあ、その例を使って、考えてみよう」
サークルの活動報告書を例に
「じゃあ、ちょっと仮の話になるけど、この報告書をやらなきゃ、って思ったのはいつ?」
「ええと、出し物の責任者になったときだから、6月末頃ですかね」
「ちょっと遠いな。じゃあ〆切が決まったのは?」
「学祭がおわった後のミーティングなんで、10月末です。一ヶ月前か・・・」
では、その時点をベースに考えてみよう。ほんとは6月末の段階から考えるべきだろうけど、ちょっと難しそうだから。
「そのとき、さくらさんどう考えた?」
「はい、手元には出し物の写真とかタイムスケジュール、あとお客さんからのアンケートとかがあったんで、これを読んでまとめなきゃ、って思いました」
「どれくらいの分量で?どういう文体で?」
「・・・あ、それがよくわかんなかったんです」
「ミーティングのときに確認しておけばよかったね・・・」
「そうそう。まず作り始める前に『ゴールはどのあたり?』なのかを、日付だけじゃなくて成果物のクオリティや仕様についてもある程度検討しておかないとね」
これ、レポート課題とかでも確認しない学生がけっこう居るんだよな。
「まあでも、『これについて次は何するの?』はわかってたんじゃないですか」
映二くんが頭を抱えるさくらさんたちに助け船を出した。
「まあ、ちょっと置いておいて・・・『何を・どこを・だれを使うの?』『いったん見せる〆切は?』も一緒に考えてみよう」
「使う物はそろってたんだよね」
いや、たぶん大事なものを一つ忘れている。
「・・・ううん、さくらちゃんがそんなことに悩んでいるんなら、昨年の先輩が作った報告書も渡せばよかったんだ・・・ごめんね」
「あーっ」
つばきさんが気がついたみたいだ。そうそう、そういう「組織のための文書」なら、たいてい過去の遺産があるはず。それを丸ごといただくのはまずくても、どのくらいの分量でどういう形式かのたたき台にはなるよね。
「あと、それを見ながら班員にも手伝ってもらえば良かったんじゃないかな」
「確かに・・・手書きのアンケートをまとめてパソコンに打ち込むだけでも結構時間掛かっちゃいました。しかも、パソコン家にないので、大学の図書館が開いているときしかできなくて。うかつでした」
それなら、パソコンを持っている班員に適宜手伝ってもらうべきだったね。
「そして『いったん見せる〆切』って何ですか?」
「以前、レポート作成のときに言ったことなんだけど、やっぱ早めに誰かに見せて方向性とか確認しておくべきなんだよ」
レポート”ピアレビュー”のすすめ~提出前に「他人の目」をいれておこう
”その問いに答えるだけの意義があるか”や、”その問いで出題者は何を聞きたがっているのか”という視点は、一人で考えるとなかなかわからないものなんだ。だから、とにかく取りかかってしまって、一旦誰かにチェッ …
”その問いに答えるだけの意義があるか”や、”その問いで出題者は何を聞きたがっているのか”という視点は、一人で考えるとなかなかわからないものなんだ。だから、とにかく取りかかってしまって、一旦誰かにチェックしてもらう方が良い
「ああ、そういえば、とりあえずやってみようって言う話もありましたね」
とりあえず3日やってみる!初めてのレポートで気づいたコツ
ちょっとだけでもやってみれば力のいれ具合がわかります
「ちょっととりかかってみて、パソコンとの関係で大変だってことがわかったら、あらためて班員やつばきさんに相談すべきだったね」
「そうすると、『次にやることは?』も本当は違いましたね」
うん、理想を言えば、マイルストーンはいくつかあったほうがいいね。
さくらさんはメモを取り始めた。
【ほんとはこうすべきだった、11月末〆切の活動報告書の手順】
「過去の報告書があるか確認する」
→「今回どこを変えるべきか考える」
→「資料が揃っているかを確認して整理手順を考える」
→・・・(場合によっては班員と手分けして整理)
→「報告書をとりあえず10月10日あたりにつばきさんにいったん見せる」
→・・・(やってるうちにいろいろ出てきそうだな)
→「11月15日あたりに一度完成ということにする」
「でも、なんでこの分解作業を先に教えたんですか」
「書き出すときに、この分解をちょっと意識しておくと、緊急度が変わることがあるんだよ。たとえば、『1ヶ月先の〆切だけど、Aさんにとりあえず相談しよう』って思っても、Aさんと次に会える機会が明日と3週間先しかないってことがわかったらどうなる?」
「あ、明日までに相談メモ作らないとダメですね。急に緊急度上がるんだ」
ありゃ、ここでコーヒーが冷めてしまった。うーん、まだ続くんだけどな。
「冷えてきたから暖房を淹れて、今度はしょうが紅茶淹れるよ。その間に、リストをさらにいじってみて。ましてや、今はもう〆切が過ぎちゃっているから、それに併せて『次どうするの?』を考えてみて。つばきさんも相談にのってあげてね」
「はーい。さくらがピンチなので、ちょっと、サークルの他のメンバーにも連絡してみます」
「みんなごめん・・・」
◇ぱうぜセンセのメモ◇
ほんというと「こんなところにいないでさっさとパソコン室に行かなきゃ」って言おうかと思ったけど、まあ、これって繰り返すからなあ。早めに気がついて良かったかも。
編集後記
具体的な内容をひねりだすのにちょっと苦労しました。今回つくった「やることリスト」は、次回以降もどんどん加工していきます。お楽しみに。
さて、来週の今頃なのですが、急遽イベントに登壇することになりました。
第2回 ネット選挙勉強会 ~ブロガー・SNS利用者がしていいこと・いけないことはなに?を考える~ | Peatix
衆院選前にネットでの選挙活動とSNS利用者の関係を考えます
内容については主宰者の奥野さんが詳しく書いてくださっています。
【12/6】急きょ開催。ブロガー・SNS利用者が「ネット選挙」でしていいこと・いけないことの勉強会をします! #snssenkyo @東京・代々木 |
ブロガー目線での企画です
西田亮介先生とコラボする機会(しかも一般向けの企画)はあまりないので、登壇者としても楽しみにしています。なにより、SNSと選挙の関係はだれにとっても一大事であるところ、今回はほんとの専門家(かつ、同じ歳)である先生とお話出来る機会ですからねえ・・・(そう、登壇者二人とも1983年生まれなんです)。
いつもこの連載でぱうぜセンセをやるときには行政法学研究者の仮面は脱いでいるんですが、このイベントでは研究者(ただし選挙が専門というわけではない)とブロガーの両方の立場から発言します。先生っぽいところもセンセっぽいところも見られると思いますので、ぜひどうぞ。
ぜひ皆さん、「バーチャルコメントボックス」に質問をお寄せください。Twitterで @kfpause宛てにツイートしていただいても結構ですし、 #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。
(追記)掘り下げ質問も箇条書きがいいな、というコメントをTwitterでいただいたので追加してみました。
2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/