「そうか、もう卒業なんだね」
新聞部部長の文哉くんが、もうすぐ卒業だということで挨拶にやってきた。後輩のかすみさんと弟の真理哉くんも一緒に。
「卒業式に配る新聞は、卒業する先輩むけの記事にしたいんです。なにかありませんかねえ」
「卒業する今だからこそ、考えておくことはありますか?」
といっても、既に卒業生向けの回はあるからなあ。ちょっとそれを振りかえりつつ、話すことにしようか。
(前回のお話はこちら)一人暮らしを始める前に!「見ないで出来る」ことを増やしておこう
内面をゆっくり向き合う時間を
「あ、確かに既に他の先輩達も同じ質問してるんですね」
うん、卒業するまでにやっておきたいこととか、社会人になってすぐの頃にオススメの趣味とかはしゃべったねえ。
学生生活が終わる前に!色々手を出してみよう
学割と定期券使って出歩いてみたり、大学図書館使い倒してみたり
「新社会人におすすめの趣味は?」~『書店めぐり』のススメ
新社会人になる前でもオススメ
「あと、定期試験終わった直後にやってもらいたいこともしゃべったね」
「定期試験後にもう一回?」アウトプットとインプットを行き来しよう
定期試験問題は受けっぱなしだともったいない、って話です
「それらはそれらで面白いんですけど、なんかありませんかねえ」
「そうねえ・・・文哉くんたちって、卒業後どうするの?」
「私は大学院に行くことになりました。情報政策についてもっと学んでみたいな、と」
ん、だったらもう少し踏み込んだことをいったほうがいいかな。
「文哉くん、『どこかに出かけていく』ことにかけては今までの取材活動等でいろいろ経験値が溜まっているよね。この『空白の時間』に、自分の内面と向き合ってみてはどうかな」
自分の「経験」を分解して整理する
「内面と、ですか?」
「うん。たぶん大学4年間の経験のなかで、講義も、サークルも、バイトも、プライベートも・・・いろんなことが会ったと思うんだよね。いや、大学4年間だけじゃないな、今までの・・・そうだなあ、受験とか、そういうのも全部込みで」
「そう言われてみればそうですね」
「新聞部の運営、ほんと大変でしたよね」
「卒業論文〆切と年末号の校了が重なったときは死ぬかと思ったよ・・・」
それはえぐいな。さすがである。
「思い出話のレベルを超えて、『今まで自分はどんな課題・テーマにどういう手法で取り組んできたのか』を、分解して整理してみては。それって、もう『経験資産』とでもいうべき宝物だよ」
「そうか、ちょうど商品入替えの前の棚卸しみたいなモノですね!」
かすみさん、スーパーでのバイトの知識を使って上手くたとえてくれた。
あれ、なんか真理哉くんが渋い顔している。
「なんか、推薦入試の自己推薦書みたいでイヤっすね・・・就活でも書くんでしたっけ、そういうの」
「なんでイヤなの?」
「だって、自分の良いところ探しみたいで格好付ける感じが臭くて。兄貴のドヤ顔って結構辛いっすよ」
「そういわれると、私なんて失敗してばかりだし・・・」
かすみさんまでオロオロしはじめた。
あー、そうじゃないそうじゃない。目的を話さないといけないな。
自分に向いたやり方を見つけるためのステップ
「別に後輩に先輩風を吹かせるためにやるわけじゃないし、自己嫌悪に陥ってもしょうがない。これは、『自分に向いている手順を組み立てる』下調べなんだよ」
「どういうことですか?」
「どんな勉強でも、人には向き不向きってあるでしょ」
暗記をするのでも、何回もテキストを読めば大丈夫な人もいれば、暗記カードを作る人もいるしね。
「あー、あと、慣れ親しんだやり方なら、どれくらいの時間でモノになるかもなんとなくわかりますね」
「これから先、『勉強』とは意識しないかたちでの勉強も出てくる。会社の仕事を覚えたり、仕事で書く書面の作成法を学んだり・・・でも、『中身』が変わったとしても、身につけることの手順はそこまで大きく変わらないかもしれないよね」
「でも、会社だったらパソコンとか使うんじゃ」
「方法自体も更新していくだろうけど、『現時点で~~というやり方なら自分に向いている』って気がついているものがあれば、それを先ず試してみるっていうのは悪くないでしょ」
〔向いているやり方〕をとっかかりにする
「だったら、ぱうぜセンセ自身はなにかあるんですか?」
「うん、自分はね、『人に話しているときが一番頭がよく働く』ってことに気がついてから、だいぶ楽になったんだよ」
「どういうことですか?」
「博士論文を執筆しているときに、詰まってくると、指導教員や同期や後輩に、現時点で自分が考えていることを、手元でメモを取りながらしゃべりまくったんだ。そうしたら良いアイデアや解決策や書き進め方が見つかって、先に進めるということがたくさんあった」
あとでそのノートを見ながら原稿に起こすわけです。もうこれは経験知、だねえ。
「だから、自分が研究室を持つときには、こうやって人と話す時間がとりやすいように配置を決めたんだよ」
「へぇえ、単にコーヒーが好きっていうだけじゃないんですね」
「で、今は、講義の進め方とか、依頼された原稿の方向性がわからないときとかは誰かに聞いてもらうようにしている」
それが糸口になるんだよね。
「そうか、取材のまとめ方でうまくいったこととか、マズかったことというのは、そのまま大学院生活でも使えるかも知れないんですね」
他にもあるけれども、とりあえず今日はここまでかな。
「ステップっていうからには、他にも手順があるんですよね?」
うん、続きはコーヒーを淹れてからにしますかね。
◇ぱうぜセンセのメモ◇
勉強法でもいろいろとあるんだけど、ほんと「向いてるかどうか」は今までやった自分に聞いてみるのが一番の近道だからね。
編集後記
この話は、「ロースクールに進学する前にしていたことは何かありますか」という質問から生まれております。もうちょっと実践的(だが法学に偏った話)で答えたので、一般向けに書き直しました。次回はちょっと踏み込むかもしれません。
ぜひ皆さん、「バーチャルコメントボックス」に質問をお寄せください。Twitterで @kfpause宛てにツイートしていただいても結構ですし、 #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。
2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/