さて、アシタノ・ハックス連載第2回です。
前回に引き続き、今回もこの連載で扱う「ライフハック」や「仕事術」の概念的なお話や、これらを学ぶためのBLOGや書籍と言った情報元との出会い方・読み方などを紹介していきたいと思います。
今回のテーマは「予定や作業を管理することは果たして「面倒」なのか?」ということで、何だか社会人の常識的に語られがちな予定や作業の管理について、そもそも何故予定や作業を管理する必要があるのか?どんなメリットがあるのか?について考えてみましょう。
忘れない様にするため?忘れるため?
スケジュール管理を行うのは何故?
会社でもお店でも工房でも現場でも、仕事をする上で予定(スケジュール)を管理するのは何故でしょうか?また、仕事でなくとも友達や家族との約束を手帳やスマートフォンに記録しておくのはどうしてでしょうか?
恐らく真っ先に思いつく理由が「予定を忘れないため」・・・もう少し砕くと「人との約束を破って社会的信用を失わないため」とか「ダブルブッキングをなくして不要なトラブルや調整を防ぐため」と言ったトラブルを回避系の事柄ではないかと思います。
少し言葉遊びに近いですが、こういった理由を思いつく背景には「私たちは予定を忘れるから、思い出せるように書き留めておく」という事実があるはずです。ということは、より正確に表現すれば「予定を忘れても問題が無いように」スケジュールを管理するのではないでしょうか。
ストレスフリーと「認知リソース」の節約
「忘れても問題が無いように」書き出しておくということは、実は私たちの脳にとって非常に有利に働きます。少し難しい表現をすると書き出してしまうことで「認知リソース」をある程度解放することができるのです。
「認知リソース」は聞き慣れない言葉だと思いますので、興味が有る方は是非次の記事を読んでみてください。
シゴタノ! 自分にとって「鮮やか」な方法を考える
つまり、生産性の高い仕事をする上では、認知リソースを有効活用する必要がある、というわけです。ちょうど、コンピュータでも似たような状況が見受けられます。たくさんのアプリケーションを同時に立ち上げると、動 …
認知リソースの節約が重要
この記事の中でシゴタノ!の大橋(@shigotano)さんが「ライフハックス鮮やかな仕事術―やる気と時間を生み出すアイディア」という書籍からまとめた「認知リソース」は次の通りです。
- 現代において、まず何よりも減じるべきは、ストレスである
- そのためには「認知リソース」をできるだけ解放する必要がある
- 「認知リソース」とは、目の前の仕事を実行するために消費されるもの
- 例えば、文章を書いているときは、直前に書いたことと、
- 次にどんなことを書こうとしているかと覚えておく必要がある
- このようなことを「覚えておく」ために認知リソースが消費される
- 記憶、注意、思考などのために活用できる脳のリソースには限界がある
- この限界を超えると、作業のパフォーマンスは極端に低下する
- 認知リソースを酷使する仕事を長時間続けると、ストレスになる
ここで注目頂きたいのが「認知リソース」はその名の通り有限な資源であり、記憶、注意、思考などを行う際にどんどんと消費されていくと言うことです。そして、この認知リソースを解放することがストレスの軽減につながるということも見過ごせないポイントであるといえるでしょう。
先の例に戻ると、スケジュールを忘れない様に注意し続ける為には認知リソースを消費する必要があり、スケジュールを忘れても良い様にどこかに書いてしまえば注意を払う必要がなくなるので認知リソースが節約できるということになります。
認知リソースは1日の作業全般のパフォーマンスに影響しますので、スケジュールを忘れない様に注意を向ける認知リソースをできるだけ節約して(さっさと予定を書き出してしまって)、作業を終わらせる方に認知リソースを振り向けた方が良いというのはごく自然な考え方ではないでしょうか。
自分株式会社のリソース管理
先ほどは「認知リソース」のリソース管理についてお話ししましたが、私たちが管理すべきもうひとつの重要なリソースが「時間リソース」です。何をアタリマエなことを・・・と思われるかもしれませんが、この時間の管理が意外に難しいのです。試しに今現在置かれているご自身の状況を元に次の質問を考えてみて下さい。
3日後が締め切りのパワーポイント資料(15P程度)の作成を依頼されました。あなたはこの依頼を受けることができますか?
この資料作成の仕事の依頼を上司に振られたときに、依頼を受けるか受けないかを考える際に次の様なことを考える必要があります。
- 資料作成に必要な時間は?(資料に求められるクオリティは?流用率は?)
- 3日後までに自分が供出可能な時間は?(まとまった時間?効率の良い時間?)
つまり、作業の見積もり時間と、自分の手持ち時間の両方を鑑みなければこの依頼を受けられるかのジャッジすらできないのです。この手持ちの時間をできるだけ正確に把握するということは、自分が今抱えている予定や作業を正確に把握することとほぼ同義なのです。(今後予定と作業を時間にコンバートする具体的な方法論を取りあげます)
作業が無理だと判断したときにも上司に明確に「私はこういう作業や予定があって、その作業を新たに行うのは難しいです」と説明できる必要がありますし、その場合でも「一人では手が足らないので誰かに作業を手伝ってもらえれば大丈夫です」と言った代替案ができることが望ましいのです。
勿論、手持ち時間が足らないときに残業や徹夜といったオプションも提案できるでしょうが、それを許さない要因も多々あります。(どうしても自分が子供を保育園に迎えに行かなければいけない、家人の看病がある、連日深夜残業続きでその作業は徹夜すれば対応できるが体力的にそろそろ危険などなど)
予定と作業に加え、自分の中での最優先事項(家族との時間を大事にする、仕事を何よりも優先する)や体力的な要素も含め、本当に自分が割り当て可能な時間はどれほどかを頭の中だけで管理することはまず不可能です。超天才的な記憶力と認識力、そして無尽蔵の認知リソースを持ち合わせている人でもなければ、予定や作業を書き出して管理し、その中でその他の要素を加味しながら検証する以外に方策は存在しないのです。
会社経営はヒト・モノ・カネ・時間・情報といった経営資源を如何に管理するか(上手く配分するか)が重要なのですが、私たち個人においても「認知リソース」「時間リソース」といった資源の管理が重要となります。
最後に
今回は予定や作業を管理することで以下の2点のメリットがあることを紹介いたしました。
- 「認知リソース」をより多く作業に割り当てることができる
(もしくはストレス軽減につながる) - 「時間リソース」を把握できるようになり、より正確なジャッジが可能となる
予定や作業を管理することは一見「面倒そう」に見えるかも知れませんが、管理することによって得られるメリットは計り知れません。但し、「認知リソース」の節約や「時間リソース」の把握の為に管理コストをかけ過ぎるのも本末転倒であることも一つの事実です。
今後、本連載では”管理コストを抑えつつ十分なメリットを享受する”ための情報管理手法を紹介していきますので、乞うご期待です。
参考図書
ライフハックで如何に認知リソースを節約するかについて詳しく知りたい方は本書を是非お読み下さい。
自分の価値観や最優先事項に則って「時間」を管理することに関しては本書を超える本はないと思っています。
告知
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ベックです!
横浜在住大阪人。本職SE。ガジェット、文具、手帳、ライフハック、モバイルが大好物な30代男性。BLOG「Hacks for Creative Life!」が主戦場です!。『EVERNOTE情報整理術』『クラウド「超」活用術』著者。勉強会『東京ライフハック研究会』の主宰者でもあります。
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