人前で話すときのヒント4 「布石をうつ」

「布石をうつ」とは囲碁の言葉だそうです。

囲碁で、序盤に全体の局面を見据えて石を打つこと。転じて、将来を見越してあらかじめ手段を講じておくこと。 (布石を打つとは – 日本語表現辞典 Weblio辞書

後々効いてくる一手をあらかじめ打っておき、その後の展開を有利に進めることと、とらえておいて差し支えなさそうです。

おそらく、布石をうつためには全体の流れ、局面がどう展開していくのかを見据えておく必要があるでしょう。

後々効いてくる一手を打っておくことは、人前で話す際にも、聞き手の興味をひくためにとても効果的な手である、と言えます。

「?」を抱かせる

布石としてよく用いられるものが、聞き手の中に「?」を抱かせる、というもの。

聞き手が「ん?」「どゆこと?」と思うような言葉や問いを投げかけ、「?」を抱かせることで興味を引き、最終的にその「?」を解消し、「なるほど!」「そういうことか!」とストンと落とす。

順序立てて、伝えたいことまで積み上げていく、という解説が王道でわかりやすいのでしょうが、そればかりでは物足りない。

何かしら「しかけ」があったほうが、聞く方も話す方もなんだか楽しいじゃないですか。

以前、あるセミナーで習慣化というテーマでLT(ライトニングトーク)を募集しており、そこに応募して短いプレゼンをさせてもらいました。

その際、この『「?」を抱かせる』手法を用い、布石をうち、話を展開しました。

「習慣化は、スーパーマリオブラザーズをやるがのごとく」

冒頭で元気にそう宣言し、話を展開していきました。

パッと聴いただけでは「なんのこと?」って感じだと思います。

「どういう意味?」って思わせることかできれば、つかみはとりあえずオーケー。もちろん、つかむだけではい終わり、ではなく、最後にはちゃんとその意味を理解してもらわなければいけません。

5分間の持ち時間のうち、4分ほどを使って意味を伝えていきました。

最終的には「習慣化は、スーパーマリオブラザーズをやるがのごとく」の意味するところを理解してもらえたのではないかな、と思います。

直感的でない表現をクッションに置く

わかりやすい表現や図を用いることはとても大事なことです。

ただ、やっぱりそればかりでは単調になってしまうおそれがある。

そこで、ときには聞き手が「ん?」と感じるような書き方をし、ワンクッションを置いたあと、直感的に理解できるものを、言葉を、図を持ってくる、という手があります。

布石として、わざと引っかかる表現をしたりして、ワンクッション置くということです。

以前、校外学習の事前指導として、生徒に対してスライドを使って解説したことがあります。

メインは、「通天閣」と「東京スカイツリー」の高さの違いを伝えること。

東京スカイツリーは通天閣の6倍の高さがあります。それを図で表現してやれば、見てすぐわかり、伝わりやすい。

でもあえて、この図の前に、数値による比較を入れるわけです。実際の大きさは全然違うのに、わざと同じ高さにしちゃった画像を加えたりなんかして。

で、だいたい同じ縮尺で表示した二つの画像を見せる。

数値と同じ大きさの画像によって聞き手に「ん?」と感じさせる布石をうち、その「ん?」をすぐに解消するわけです。

100mと600mでは、これだけ違うのか、というインパクトを与えるために。

加えて、この図を次のように提示していき、

「通天閣の上に、もう一つ通天閣をのっけて、その上にまた通天閣をのっけて、さらにまた通天閣をのっけて、、、」

って感じで話し、スライドの動きに言葉を加えて、結論である「通天閣を6個積み重ねるとスカイツリーの高さになる」ということを伝えていきました。

「スライドは、しゃべりとセットで」が肝心です。

「布石をうつ」ために

こういった布石をうつためには、囲碁と同じで、全体の流れがどう展開していくのかを見据えておく必要があります。

どういう流れで話を進めていくのか、自分の中で明確にしておき、後々効いてきそうな手を考える。

実際、「習慣化は、スーパーマリオブラザーズをやるがのごとく」という言葉は、いったんLTの内容がすべて定まり、スライドもおおかた作り終えた後、「もっと効果的に伝える、インパクトを込めることはできないかな?」と考える中で生まれました。

序盤に「習慣化は、スーパーマリオブラザーズをやるがのごとく」と言うことで、聞き手の人たちは「どういうこと?」と興味を持ってもらえるはずだと。

そして、伝えたいことの話の大筋はもう定まっていたので、その一言がかなり効果的な役割をしてくれるはずだ、という確信も抱くことができました。

それもこれも、LTの全体の流れ・内容を定めていたからこそ。

結果、「習慣化は、スーパーマリオブラザーズをやるがのごとく」は、LTのメインフレーズとなり、この言葉を中心にスライドをすべて作り変えることで、より良いものができたと思っています。

布石をうつために、まず、全体像をはっきりさせておく。

そこが弱いと、効果的な布石をうつことは難しくなってくると思います。

おわりに

聞き手に「?」を抱かせるための問いかけや、言葉の表現は、布石をうつためにはとても大事かな、と思います。

毎回毎回、有効そうな布石を思いつくとは限りません。

話の展開を考える際の、構成方法の一つとして、頭の片隅で意識しながら全体を練っていくことで、布石は見えてくるものかな、と思います。

布石にこだわるのではなく、「結論を際立たせるための問いかけ、なんかできひんかなぁ」という、肩肘張らないくらいがちょうどいい。

そういうスタンスで、伝えたいことの準備をしてくことが、もしかしたらいい発想につながるのかもしれません。

では、お読みいただきありがとうございました。

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