ブログで、自由なアウトライン・プロセッシングのための環境を整える/『アウトライナー実践入門』とWorkFlowyの使い道(普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける、ということ[番外編])

こんにちは。「単純作業に心を込めて」彩郎です。この連載では、「普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける、ということ」をテーマに、つらつらと考えています。

前回の「言いたいことは、終わらない。」で書いたのは、「ブログを始めようとするときは、自分の中にブログ記事を書いてまで言いたいことがあるのだろうか、という不安を抱いたけれど、いざブログを始めてみたら、言いたいことがどんどん出てきて、いつまでたっても終わりそうにない。」という実体験です。

そして、今回は、この体験を踏まえ、「ひとつの「言いたいこと」をブログ記事として書き上げて公開するプロセスの中から、たくさんの「言いたいこと」を発見できるというメカニズム」を検討しようと思っていました。

この回答のポイントは、ひとつの「言いたいこと」をブログ記事として書き上げて公開するプロセスの中から、たくさんの「言いたいこと」を発見できるというメカニズムにあります。

とはいえ、このメカニズムをうまく機能させるには、いくつかの条件が必要な気もします。次回は、このあたりのこと、ひとつの「言いたいこと」をブログ記事を書き上げ、公開するプロセスの中から、たくさんの「言いたいこと」を発見するというメカニズムのために、どんなことが大切なのか、考えてみます。

言いたいことは、終わらない。

しかし、少し予定を変えて、今回は、2016年7月9日発売の『アウトライナー実践入門~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術~』を紹介します。

アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術~

『アウトライナー実践入門』は、ブログ「Word Piece >>by Tak.」や電子書籍『アウトライン・プロセッシング入門』のTak.さんによる新刊です。アウトライナーやアウトライン・プロセッシングの基本から説き起こし、知的生産に新しい世界を開く自由なアウトライン・プロセッシングをあざやかに描いています。

本書で紹介されている自由なアウトライン・プロセッシングは、もともと今回ここで紹介しようと思っていた「ひとつの「言いたいこと」をブログ記事として書き上げて公開するプロセスの中から、たくさんの「言いたいこと」を発見できるというメカニズム」と、まっすぐにつながっています。

当初の予定ルートから少し離れ、『アウトライナー実践入門』に寄り道することは、「普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける、ということ」という本連載のテーマを考える上で、きっと大きなプラスになるはずです。

『アウトライナー実践入門』を読むと、自由なアウトライン・プロセッシングを実践したくなる

発売開始から数日、『アウトライナー実践入門』については、既にいくつもの紹介記事が公開されています。

中でもわかりやすいのは、シゴタノ!に倉下忠憲さんが公開したこの記事です。

ぜひともアウトライナーを使ってみたくなる一冊 | シゴタノ!

『アウトライン・プロセッシング入門』との関係、「生きたアウトライン」と「死んだアウトライン」のポイントなど、本書に興味を持った方がまず気になるいくつかの情報が、端的にまとめられています。この記事を読めば、『アウトライナー実践入門』がどんなニーズに応える本なのかが、イメージできるはずです。

さらに、私がぽんと膝を打ったのは、この一言、

本書を読めば、間違いなくいろいろやってみたくなるでしょう。

それから、「ぜひともアウトライナーを使ってみたくなる一冊 | シゴタノ!」という記事のタイトルでした。

ほんとうにそうです。

『アウトライナー実践入門』を読むと、アウトライナーを使ってみたくなります。そして、いろいろやってみたくなります。

トップダウンとボトムアップを往復する「シェイク」、フリーライティングを起点に文章を書き上げる、文節ごとに区切って入力した言葉をくるくる入れ替えながら文を書く、ひとつのアウトラインに書きかけの文章の全部を放り込む……。

他の本ではあまり読んだことのない、はじめて出会う知的生産の技法の数々にワクワクし、やってみたくなります。ぜひとも自由なアウトライン・プロセッシングを実践したくなるのです。

でも、普通の個人は、どんな場面で、何のために?

2016年の世界では、自由なアウトライン・プロセッシングをやってみたいと思ったら、すぐに実践できます。2016年のプロセス型アウトライナーWorkFlowyがあるからです。

WorkFlowyは、無料から利用できるクラウドサービスです。アカウントを作りさえすれば、すぐに理想的なプロセス型アウトライナーを利用できます。あとは、WorkFlowyの真っ白な画面のうえに、『アウトライナー実践入門』で学んだことをどんどん書いていけば、それが自由なアウトライン・プロセッシングになります。

ところが、WorkFlowyだけでは足りないかもしれません。というのも、WorkFlowyがあれば自由なアウトライン・プロセッシングを実践できるとしても、では、その自由なアウトライン・プロセッシングを、どんな場面で、何のために活用したらいいのかが、必ずしも明確ではないためです。

たとえば、本書のひとつの柱は、「プロセス型アウトライナーで文章を書く」です。とりわけ、「Part3 文章を書く」の「3.2 自由な発想を文章化する」には、フリーライティングを起点とするアウトライン・プロセッシングが丁寧に説明されています。(個人的には、とてもゾクゾクします。)

でも、ここで紹介されているのは、

  • 単に考えるだけでなく、考えたことをひとつの完成した文章として書き上げる
  • 与えられたテーマについての文章を書くのではなく、自分の中から発見したテーマをめぐって文章を書く

という営みです。学生や研究者や作家であればともかく、普通の個人の毎日の中に、こんな機会が、どれくらいあるのでしょうか。仮に、心に何かもやもやと引っかかるものがあって、それを言葉にしてみたとしても、完成品としての文章まで書き上げるまでする人は、ほとんどいないような気がします。(誰に依頼されるでもなく、具体的な用件を誰かに伝えるわけでもなく、ひとつの完結した文章を書き上げたことが、最近、ありましたか?)

また、「Part3 文章を書く」の「3.4 複数の書きかけの文章を管理する」では、複数の書きかけの文章をひとつのアウトラインに入れて管理する、という方法が紹介されています。

この方法は、書きかけの文章が埋没しないだけでなく、複数の書きかけの断片をまたいだ〈シェイク〉が生じて、アウトラインがアイデア発酵槽のように機能する点で、画期的です。書きかけの文章を大量に抱え、その管理方法に悩んでいる多くの方にとって、福音となる方法だと思います。(個人的には、この方法は、紙の書類整理における『「超」整理法』の「押出しフィリング」と同じくらいの革命を実現してくれました。)

しかし、書きかけの文章を大量に抱えている、という状態は、誰にでもあるものではありません。研究や考察を生業とする研究者や、複数の媒体で連載を持っている作家やライターならともかく、普通の個人の生活において、書きかけの文章というものは、それほど一般的でもないような気がします。(自分自身をふり返ってみて、「書きかけの文章」って、現時点で、いくつくらいありますか?)

さらに、この方法の素晴らしさのひとつは、アイデア発酵槽、とりわけ、あるときに途中まで書いた文章の断片が、長い時を経た後、ふとしたきっかけで他の断片と化学反応を起こし、ひとつの文章に結実する、というようなことにあるのですが、このようなあり方は、他者から〆切やテーマを与えられて書く文章ではあまり役に立ちません。(たとえば、仮に、2年前に依頼された原稿に関連して、今朝、面白い文章を書き上げることができたとして、その文章を2年前の依頼主に掲載してくれと頼むことは、現実的ではありませんし、ほかに掲載のあてが思い浮かぶ方は少数派だと思います。)

ですから、多くの普通の個人にとっては、複数の書きかけの文章をひとつのアウトラインで管理する、という方法は、そこまで強い恩恵を実感できるものではありません。

そんなわけで、私が危惧しているのは

「『アウトライナー実践入門』が描く自由なアウトライン・プロセッシングは魅力的でワクワクするけれど、こと自分自身の具体的な生活に当てはめてみると、どんな場面で、何のために活躍する手法なのかが、今ひとつピンと来ない」

という受け止め方です。

しかし、自由なアウトライン・プロセッシングの恩恵を受けられる人は、実はたくさん存在しているはずです(私もそうでした)。

だから、(学生でも研究者でも作家でもライターでもない)普通の個人が、自由なアウトライン・プロセッシングを、毎日の中で自然と体験でき、その恩恵を強く実感できるような条件が整うといいなと思っています。そうなれば、『アウトライナー実践入門』が入り口となり、プロセス型アウトライナーや自由なアウトライン・プロセッシングがたくさんの普通の個人に行き渡ることでしょう。

でも、私自身がそうであるように、アウトライナー、そしてアウトライン・プロセッシングを必要としている人が、実はたくさん存在していることを私は知っています。そんな人たちにとって、本書が入り口になることを願っています。

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では、どうしたらよいでしょうか。

普通の個人が、自由なアウトライン・プロセッシングを、毎日の生活の中で自然と体験するために、何かいい解決策はないでしょうか。

WorkFlowyで大量の書きかけのブログ原稿全体を管理してみる

私の提案は、「自分のブログを持つこと」です。(ここで、『アウトライナー実践入門』が、本連載とつながります。)

自由なアウトライン・プロセッシングのためには、文章を書き上げることが大きな意味を持ちます。ひとりだけで誰にも読まれるあてのない文章を書き上げることはなかなか難しいことですが、自分のブログを持てば、誰かに読まれる可能性が開かれます。可能性があるだけでも、文章を書き上げることに向けた原動力が湧いてきます。

自由なアウトライン・プロセッシングのためには、あらかじめテーマを限定せず、自分の中に発見したテーマについての文章を次々と書いていくことが有効です。他者のために文章を書く場面では、完全に自由なテーマで書くことは難しいですが、自分のブログに書く文章なら、どんなテーマだって自由です。

自由なアウトライン・プロセッシングをしていると、アイデア発酵槽のように機能するアウトラインから、ある思考の断片が時を越えて結実し、文章として完成することがあります。自分のブログなら、何年越しに結実した文章であろうが、結実したそのタイミングで、公開することができます。

自分のブログを持ち、自分のブログのための文章を書き続けると、プロセス型アウトライナーと自由なアウトライン・プロセッシングは、俄然、その真価を発揮します。自分のブログは、自由なアウトライン・プロセッシングのための環境を整えてくれるのです。

自分のブログを持つと、プロセス型アウトライナーがどのように力を発揮するかについて、主にWorkFlowyを念頭に置いて、いくつかのポイントを掘り下げてみます。

(1) WorkFlowyに書きかけブログ原稿用のトピックを作り、大量の書きかけのブログ原稿群全体全体を管理する

『アウトライナー実践入門』は、「書きかけの文章群全体をアウトライナーで管理する」という方法を紹介しています。

方法はとてもシンプルです。単純な2階層のアウトラインを作り、第1階層にタイトルを、第2階層以下に内容を入れるだけです。ここに内容も順番も関係なく、書きかけのものはすべて放り込みます。完成型に近いものもあれば、断片的なフレーズもあります。ポイントは、完成度を区別しないことです。当然、ここで「タイトル」といっているのは、その時点での仮のものです(タイトルがつかないような断片なら第1階層にそのまま内容を書き込みます)。

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ブログ原稿群の管理は、この方法がもっともハマる用途のひとつです。つまり、WorkFlowyの中に、書きかけブログ原稿用のトピックを作って、書きかけのブログ原稿の全部を、このトピックの下に並べるわけです。

私は、Home直下に「flow」というトピックを作り、書きかけのブログ原稿をその下に並べています。

ブログ原稿を格納するトピック「flow」

トピックの運用方法は、本質的には、『アウトライナー実践入門』と共通しています。

時間があるときに、タイトルだけを表示させてアウトラインをブラウズします。互いに関係のありそうなものが見つかったら、近くにまとめておきます。続きを 書けそうなものがあれば、下の階層を開いて加筆します。まとまりそうな項目があったら、その項目を集中して仕上げていきます。要するに、複数の書きかけの 断片をまたいで〈シェイク〉するわけです。

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現在進行形で加筆している(ホットな)項目は、埋没しないようアウトラインの上の方に移動しておきます。文章が完成して公開や送信が終わったら、その項目は削除します。

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これをベースにして、『「超」整理法』の「押出しファイリング」を参考に、ゆるやかなルールを加えています。

書きかけのブログ原稿群全体をアウトライナーで管理すると、「ファイル」という概念が消えていきます。

この「ファイルの概念が消えていく」という体験は、それなりに長い間パソコンを使って知的作業をしてきた自分の経験をふり返っても、かなり本質的で革命的な出来事です。

私は、ひとりでも多くの方に、この「ファイル」概念が消える、という感覚を味わっていただけたらなあ、と思っているのですが、WorkFlowyによって書きかけのブログ原稿全体を管理することは、この感覚を体感するための確実な方法のひとつです。

ひとつのアウトラインに書き込まれた断片は、どこにも従属しません。それ故に圧倒的に自由です。それぞれを独立した文章として扱うことも、文章の一要素として扱うこともできます。内容もまた、項目をまたがって移動します。そこに壁はありません。

ファイルの壁から解放されることで、文章や思考の断片はアウトラインの中で文字通り温められ、発酵するようになります。

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(2) 個々のブログ記事を育て、書き上げる

ブログ記事を公開するまでの過程のうち、どこまでをWorkFlowyでカバーするかは、人それぞれだと思います。

私は、かなり最後の方までWorkFlowyを使っています。WorkFlowyではない道具で行う作業は、MarsEditによる投稿作業(具体的には、スラッグとカテゴリの設定、投稿ボタンクリックくらい)だと思います。ギリギリ最後までWorkFlowyでカバーすることで、知的生産のフローの全体をWorkFlowyで担いたいと考えているためです。

では、WorkFlowyでブログ記事の文章を書き上げるとは、どんな作業でしょうか。

『アウトライナー実践入門』を読むと具体的なイメージが湧いてくると思うのですが、それは、「ブログ記事を育てる」という言葉がしっくりくるプロセスです。〈シェイク〉や「アウトライン操作の5つの〈型〉」をくり返していくうちに、ブログ記事の構成と内容が、同時に少しずつ育っていきます。

このようにトップダウン型とボトムアップ型のプロセスを繰り返すことで、アウトラインは成長していきます。「アウトライン」といっても、実際には内容も同時に書かれています。

Read more at location 718

この「ブログ記事を育てる」という感覚は、うまくいくと、とても幸せな気分になります。私は、WorkFlowyでブログ記事を書き続けていたら、文章を書くことが、もっと好きになりました。

『アウトライナー実践入門』を読み、プロセス型アウトライナーで文章を書くことの基本を掴めば、きっと、個々のブログ記事の文章を書くことが、ぐっと楽しくなります。

(3) 書き上げたブログ記事を切り出す

WorkFlowyで書き上げたブログ記事を公開するには、その記事をWorkFlowyのアウトラインから書き上さなければいけません。

この切り出しのためには、普通のコピー&ペーストや、WorkFlowy自体が備えているExport機能を利用することもできます。

WorkFlowyのExportの基本(テキストファイル、Word、Evernote、Gmail)

でも私は、マロ。さん制作のスクリプトを使っています。

普通のコピー&ペーストやWorkFlowy自体が備えているExportと比較して、ハサミスクリプトには、そのままブログに投稿できるHTMLを書き出せる、という強みがあります。切り出したデータをブログエディタに貼り付けて投稿すれば、見出しや引用などのHTMLタグを整える必要がありません。

WorkFlowyをブログツールに。ハサミスクリプトファミリーの整理(Win&Mac・HTML&マークダウン&はてな記法)

ハサミスクリプトにはたくさんの種類がありますが、私が使っているのは、MarsEditに切り出すAppleScriptです。無料でありながら、安定の高品質なので、ブログエディタとしてMacのMarsEditを使っている方は、ひとまずこれを使ってみてください。

ハサミスクリプト for MarsEdit irodrawEdithion|マロ。|note

ちなみに、抽象的な思想の話ですが、この切り出しには、2つの大きな意義があります。

ひとつは、「全体から一部分を切り出す」で、もうひとつは「流動的な変化から完成品を切り離して固定する」です。

「生きたアウトライン」は未完成なものを扱うのには最適ですが、完成品を保管しておくことには向いていません。完成した文章をアウトラインに入れたままにしておくと、再び断片の集合離反が始まります。「生きたアウトライン」は常に変わり続け、永久に完成しないという性質を持っているからです。

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WorkFlowy自体の特徴とも通じる話ですね(WorkFlowy基本5原則の、第2原則と第3原則)。

(4) ブログとWorkFlowyによって大きくなった流れから、次の思考の種を絡め取る

とても感覚的な話なのですが、WorkFlowyを使ってブログ記事を書き続けていると、自分の中の思考の流れが、確実に大きくなります。多分これは、以前、次の記事に書いた「プル型知的生産」ということと関係しています。

プル型知的生産を活用する。個人的な知的生産がプッシュ型からプル型に転換した話。

最初に「プル型知的生産」のことを書いた2014年9月、私はWorkFlowyを使っていませんでした(Evernoteを使っていました)。しかし、その後、WorkFlowyを取り入れた結果、プル型知的生産のフローが強化され、生活の中にしっかりとした「知的生産のフロー」が通りました。

思考の「流れ」を扱うツールWorkFlowyは、生活の中に「知的生産のフロー」を通し、毎日を流れる思考を活かしてくれる。

でも、この「知的生産のフロー」は、WorkFlowyだけで実現されているわけではありません。WorkFlowyとブログ(それからハサミスクリプト)という奇跡的な組み合わせがあってこそです。

「WorkFlowy」と「自分のブログ」と「ハサミスクリプト」(物事を考え続けるための、奇跡のような組み合わせについて)

このように、ブログとWorkFlowyによって、毎日の生活の中を流れる思考の流れは、ぐっと大きくなりました。そして、その上、WorkFlowy(などのプロセス型アウトライナー)は、このように大きくなった思考の流れから、次の思考の種を絡め取ることのためにも、うまく機能します。

『アウトライナー実践入門』は、この点について、2つのことを指摘しています。

ひとつは、「速さ」です。流れた思考を逃さず絡め取り捕まえるためには、ツールの「速さ」が必要なのですが、プロセス型アウトライナーは、この「速さ」がとても優れている、という指摘です。

どこから書き始めるか迷うこともありません。ただ書いて、後から適切な場所に動かせばいいのです。全体を俯瞰して「適切な場所」を見つけ出して移動する。これこそがアウトライナーのもっとも得意とする作業です。そのことから来る、書き手としての起動の速さです。

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また、プロセス型アウトライナーでは、入れ替え・階層化する前の項目は等価・平等です。したがって前後の脈絡(先に述べるべきか後に述べるべきか。前提なのか結論なのか)も、階層レベル(森に相当することなのか木に相当することなのか)も、入力段階では意識する必要がありません。だから順序や重要性に縛られることなく、思いつくそばから入力できます。その入力時の等価性から生まれるスピード感とリズム感、そしてそれを高速でつなぎかえる感覚です。

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もうひとつは、思考の流れです。

プロセス型アウトライナーは、思考を流しながら、流れていく思考を絡め取るためのツールです。

思考は流れていくものです。アウトライナーは流れていく思考をからめ取ります。

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WorkFlowyなどのプロセス型アウトライナーでブログ記事全体を管理すれば、思考の流れを大きくするだけでなく、その思考の流れから、次の思考の種を絡め取ることもうまくいきます。前回、私は、「ブログを書いていると、言いたいことは、いつまでたっても終わらない。」と書きましたが、このメカニズムを支える重要な存在が、WorkFlowy(などのプロセス型アウトライナー)です。

(5) フリーライティングからのアウトライン・プロセッシングで、ブログ記事を書いてみる

『アウトライナー実践入門』には、フリーライティングを起点として、自由な発想を文章として書き上げるプロセスが紹介されています(「3.2 自由な発想を文章化する」location 995)。

このプロセスは、以下の11個のステップから構成されます。

  • Step 1 自由なフリーライティング
  • Step 2 テーマの探索
  • Step 3 テーマを絞ったフリーライティング
  • Step 4 テーマの明確化
  • Step 5 仮のサマリーを作る
  • Step 6 仮のアウトラインを作る
  • Step 7 仮のアウトラインに沿って内容を整理する
  • Step 8 〈シェイク〉を繰り返す
  • Step 9 アウトラインの引き締め
  • Step 10 アウトラインの固定
  • Step 11 本文の完成

特に、Step 5~Step 9には、類書にはなかなか言及されていない、でも実際に役立つノウハウが満載で、とても参考になります。

試してみた方はわかると思うのですが、この11個のステップを実際に辿ってみると、自分の頭の中に、びっくりするほどいろいろなことが浮かんできます。Step 2で最初に構想した範囲を大きく超える思考が広がることも、それほどめずらしいことではありません。

ところが、この11個のステップをすべて忠実に行うのは、大変です。時間もかかります。だから、なかなかやる気が出ませんし、最後まで到達するまでの途中で行き倒れることもありうることです。

そんなとき、自分のブログが助けになってくれます。自分のブログなら、このプロセスからどんな文章が生まれたとしても、(それが公開できる内容である限り、)自分のブログに公開できます。自分のブログに公開すれば、いつか誰かに届く可能性があります。誰かに読まれる可能性が開かれているなら、それが、11のステップを最後まで辿るモチベーションになります。

ときに面倒で大変な思いがあったとしても、文章を書き上げるまでの産みの苦しみがあるとしても、どうにかこうにか文章を書き上げるというゴールまで辿りつくことができる可能性が高まります。

前回、アシタノレシピに書いた「言いたいことは、終わらない。」に対して、1UP Lettersのゆうびんや(仮)さんが、こんな記事を書いてくださいました。

なぜ文章を書くとアイディアがでるのか? | 1UP Letters

  • メモ=海外の名所を写真だけで知っている
  • 文章として書く=実際に行ってみる

という比喩を核にしたこの記事に、私はとても共感します。

文章として書くということは、自分の頭の中という大海を実際に旅してアイディアを見つけ出す作業でもあるのだと思います。

旅をすれば発見はいっぱいあるものです。

文章を書くということは自分の頭の中を旅する手段であり、書かれた文章は旅の記録となっているのではないでしょうか。

なぜ文章を書くとアイディアがでるのか? | 1UP Letters

フリーライティングを起点とした11ステップのアウトライン・プロセッシングは、自分の頭の中という大海を旅するようなものです。WorkFlowy(などのプロセス型アウトライナー)とブログさえあれば、誰だって、いつも、何度でも、旅に出ることができます。

—編集後記—

今回は、本連載のテーマである「普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける、ということ」からはちょっと寄り道をして、Tak.さんの新刊である『アウトライナー実践入門』を紹介しました。

アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術~

本書が扱うテーマは、〈文章を書き、考える〉こと一般です。でも、本書からとりわけ大きなインパクトを受ける領域のひとつが、ブログ原稿執筆だと思います。

だから、もしあなたが、文章を書き、考えるためにブログをしているなら、『アウトライナー実践入門』を読んでみてください。そして、書きかけのブログ原稿管理に、WorkFlowyを試してみてください。

また、もしあなたが、『アウトライナー実践入門』を読んで、自由なアウトライン・プロセッシングを体験したいと思ったなら、考えたことを文章の形で表現するブログを始めてみてください。そして、書きかけのブログ原稿全体を管理するために、WorkFlowyなどのプロセス型アウトライナーを使ってみてください。

きっと、世界が少しだけ、でも確実に、変わります。

さて、次回は、本筋に戻って、「ひとつの「言いたいこと」をブログ記事として書き上げて公開するプロセスの中から、たくさんの「言いたいこと」を発見できるというメカニズム」を検討します。

このメカニズムは、WorkFlowyとブログとハサミスクリプトによって構成されていて、それぞれのポイントは、

  • 全体としてのWorkFlowy=ずっと完成しないで変化し続ける有機体
    • ひとつのアウトラインで書きかけの原稿すべてを管理する
    • 文章を書き上げようとすることで、知的生産のフローを流す
    • 知的生産のフローから、次の思考の種を絡め取り、蓄積する
    • スマートフォンからも利用する
      • MemoFlowy
      • HandyFlowy
  • 一部分としてのブログ=暫定的な作品群を公開する場所
    • 投稿を制限しない
      • 投稿数を制限しない
      • 間隔を制限しない
      • 文字数を制限しない
    • テーマを制限しない
  • 全体から一部分を切り出すためのハサミスクリプト
    • ボトルネックを解消する
    • 切り出すことの意味
      • 全体から一部分を切り出す
      • 流動的な変化から切り離して固定する

となります。こうご期待。

今回は、とりわけ長くなってしまいました。

最後まで読んでくださいまして、ありがとうございます。また2週間後にお目にかかれたらうれしく思います。

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